<読む>『賢治童話を読む』 (関口安義・著) 芥川とも重なる実存的テーマ聞こえ  評・中野新治

  本書は「港の人 児童文化研究叢書003」として発行された宮沢賢治童話の研究書である。これまでに、「論叢児童文化」(くさむら社)に連載されたものに、書き下ろしを加えた32篇の作品論が収められている。全632ページに及ぶ大著であり、質量ともに類書をぬきんでた内容を持っている。テーマ別に4作品ずつに選ばれ、8章に分けて構成されているが、その内訳は次の通りである。

 Ⅰ 童心と笑い「鹿踊りのはじまり」「山男の四月」「セロ弾きのゴーシュ」「風の又三郎」
Ⅱ ファンタジーの風景「月夜のでんしんばしら」「どんぐりと山猫」「注文の多い料理店」「雪渡り」
Ⅲ 自然と人間「かしはばやしの夜」「狼森と笊森、盗森」「水仙月の四日」「やまなし」
Ⅳ 不条理の物語「雁の童子」「黄いろのトマト」「オツベルと象」「猫の事務所」
Ⅴ 心象の世界「双子の星」「ひかりの素足」「ガドルフの百合」「シグナルとシグナレス」
Ⅵ 幸せとはなにか「カイロ団長」「虔十公園林」「マグノリアの木」「ポラーノの広場」
Ⅶ 平和への願い「貝の火」「烏の北斗七星」「北守将軍と三人兄弟の医者」「グスコーブドリの伝記」
Ⅷ 原罪との闘い「よだかの星」「氷河鼠の毛皮」「フランドン農学校の豚」「なめとこ山の熊」

  こう並べただけでも壮観であるが、「銀河鉄道の夜」が取り上げられていないことについて「いずれ本書に続く賢治研究論集の中核として、『銀河鉄道の夜』の新論をお目にかけたい」(「あとがき」)という予告がなされていることを見ても、著者の賢治文学への愛着が並々ならぬものであることが伝わってくる。

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