【画像】 早稲田大 トルストイ没後100年でシンポ 辻孝明氏「生涯こそが最大遺物」 2010年5月22日
19世紀のロシア文学を代表する巨匠レフ・トルストイの没後100年を迎える今年。早稲田大学文学学術院主催のシンポジウム「トルストイと現代――トルストイ没後百年記念」が4月24日、東京・新宿区の同大で開催され、4人の研究者がそれぞれの視点から発表した(ユーラシア研究所共催)。
株式会社フロレーレ総合研究所代表取締役の辻孝明氏は、経営者や一般人を対象に月に一度主催する「生き方塾」で、トルストイを扱った経験から、一般の人々がこの作家をどう受け止めているのかについて話した。
「人間精神の向上」を重視したトルストイの生き方について、「すばらしい著作はたくさんあるが、後世の最大遺物はその生涯だった」と指摘。
「徒党を組まず、投獄されながらも、時の代権力者へ立ち向かっていったそのエネルギーの根源は何か。他者を救うことが自己を救うこと、自己を救うことが他者を救うことという使命感であったように感じる。トルストイの人生そのものが芸術作品であると思う。このような生き方は今日、夢や希望を失いかけている若者だけではなく、2千万人いる団塊世代に対しても勇気と希望を与えていくものだ」
「トルストイは100年後でもわたしたちと共にある。彼を好きかどうかにかかわらず生きている」と話したのは、早稲田大学講師のウラディーミル・フィラトフ氏。すべての社会階層、年齢層が描き出されているトルストイの作品はロシアの教育現場でも使われており、全学年でプログラムに組み込まれていること、また、トルストイが子どものために書いたということに注意を向けないわけにはいかない、と話した。
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トルストイは『アンナ・カレーニナ』を書き終えるころから人生の無意味さに苦しみ、子どものころに抱いていた神への純粋な信仰は揺らぎ始めていた。51歳のときに発表した『懺悔』、『教義神学研究』、『四福音書の統一と翻訳』などは、現存の宗教を否定し、自分の信仰を明らかにするために書いた論文である。また、晩年の『復活』はロシア正教会の教義に触れ、破門の宣告を受けている。
帝政ロシアの土台が崩れていく最中、トルストイは時代を刻む著作を重ねつつ、農民や子ども、大地を愛しながら、暴力、戦争を憎み、教会を批判し、生きる意味、愛と信仰を自らに問い続けた。後に日露戦争が始まった途端に、「ともに負けたほうがいい」と言い切った極限の反戦論を発表し、日本でも大きな反響を呼んだ。
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