【画像】 三原康可さん『ヤコブの梯子』 〝闇から光へ――魂の姿を音に〟 2010年6月19日
『ヤコブの梯子』。内田裕也さんのバンドなどで活躍するミュージシャンの三原康可(やすのり)さんが、世に問うメッセージを作品にしたCDアルバムだ。
「雲間からさす光明を表現したかった」
ヤコブのはしご――別名、薄明光線。創世記には、ヤコブが夢で雲の切れ間から差してくる光の階段が天から地上に延び、そこを天使たちが上がり下がりしている光景を見た、とする記述がある。
全11曲。スピリチュアリティとロック魂が融合されたリリカルなサウンドだ。平和、希望、光・・・、愛。中には「9条」が飛び出す歌もある。俳優、ギタリストとして活躍するが、デビュー30年目にしてソロアルバムをリリースしたのには理由がある。
その起点は9・11同時多発テロ事件。
「これが起こっていったら世界は破滅する、見てはならないものを見てしまった、というような共意識が芽生えたんじゃないかと思う。事件から10年近く経つが、世の中の流れがますますネガティブになってきて、音楽家として何か言わなくちゃ、という気持ちが強まっていった」
音で表現するギタリストとしてではなく、言葉にして自分で発言したくなった、と振り返る。
「ロックは反抗や恋を歌う。ロックの伝統的スタイルは、自分の小さなエゴを拡大していくこと。その視点で音楽制作が始まったが、せっかく積み上げてきた曲たちを、やっぱり違う!と一度取り下げた。こんなことを言うために歌うことはないんじゃないのか、と。だったら、その"ウラガワ"にある世界を歌おうと。矢沢永吉さんのようなワイルドなロック歌手にも『ヤコブ』みたいな方向性の世界が身体の中にあるはずだ。ただ見せていないだけ」
「16の頃から逃避型の人間」と笑う。自身が生きてきた人生とは、「かなり違う世界」のものに仕上がった。平和に安寧に暮らしたいという願いは誰もが抱いているが、「自分自身、そんなにそういったことを想ってきたのかな」と。
制作には1年かかった。途中「(詞の中で)これ言っちゃって大丈夫?」「いろんな誤解受けるぜ」などと自問自答を繰り返すうち、「自己崩壊も起きた」。
アルバムが完成したとき、ロック仲間には「え? キリスト教に入ったの?」と一歩引いてしまった人もいた。それはつまり、「彼らの意識にないことをやり始めた、とも言える。そう考えると、今まで僕はロックでやってきたけれど、そういうことではなくて、ミュージシャンの身体が神さまの楽器であるとするならば、それも含めてなにか『言わされている』感じがする」。
世界に目を向ければ、U2やマイケル・ジャクソンなど、正義や平和を歌い上げるアーティストが少なくない。日本のロックシーンで、平和を提唱するミュージシャンとしての活動は始まったばかりだ。
「このアルバムは人類がなるべく悪い方向へ向かわないための祈りの形。闇から光へ移行していく魂の姿を音にした」
みはら・やすのり 1959年東京生まれ。80年、ロックバンド「シルバースターズ」のギタリストとしてデビュー。90年、自身のバンド「パリ・テキサス」結成。同年、俳優活動も開始。また内田裕也氏のパーマネントバンド「トルーマンカポーティロックンロールバンド」のギタリストとしても活動中。CD『ヤコブの梯子』は全国のCDショップで発売している。
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