〝危機からの救い祈ろう〟 生誕150年 「内村鑑三と現代」テーマにシンポ 2011年4月9日

 内村鑑三の生誕150周年を記念する講演会とシンポジウム(内村鑑三生誕150周年記念事業委員会主催)が、3月19・20日の両日、東京都目黒区のNPO法人今井館教友会で開催され、約130人が参加した。「内村鑑三と現代」をテーマに、千葉眞氏(国際基督教大学教授)の司会のもと、高橋哲哉氏(東京大学教授)と、武田武長氏(フェリス女学院大学名誉教授)がパネリストとして報告した。

 シンポジウムに先立って、内村鑑三が関東大震災に言及した文書を千葉氏が紹介。内村が天譴(てんけん)論を退けながら、同震災から神に立ち戻る機会を見出したことに触れ、「(東日本大震災では)大地震・大津波・原発事故という三つの大災害が引き続き起こり、現在なお大変な状況にあるが、内村鑑三のこのような祈り、考え方に励まされて、神が日本をこの危機から救い出してくださるように祈りを深めていきたい」と強調した。

 高橋氏は、内村が日露戦争開戦直後の1904年に著した「非戦主義者の戦死」を取り上げ、非戦論者である内村が同文書で進んで兵役に服従すべきだと主張していることに着目。「『戦死』を血の犠牲として評価し、無残な戦死を栄光の死へと転換する『感情の錬金術』が行われているのではないか」と述べ、永井隆との類似点を挙げ、「戦争を美化する『犠牲の論理』の問題点を共有しているように思う」と主張した。

 また、内村が「出埃及記講義」で死刑を正当化していることに触れ、「当時も盛んであった死刑廃止論に対する真っ向からの反論であるので、内村の時代的限界であったとは即座に言うことはできない」とし、「この点だけを持ってしても、内村の贖罪論を再検討する必要がある」と主張した。

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 武田氏は、「エキュメニカルなキリスト教の教師としての内村鑑三」と題して発題。「被造物としての自然を『虚無へと屈服させている』のは人間でもあるという(内村の)解釈は、きわめて今日的であり、テキストのエコロジカルな読み直しの先取り」だと指摘。内村には「万人救済論」だけでなく、「万物の復興・天然の救済」の思想があると語った。

 当初参加を予定していたトレント・E・マクシー氏(米アマースト大学助教授)は、今回の震災の影響で来日できなくなり、書面でコメントを発表。「改宗者」としての内村鑑三に注目し、「内村の聖書解釈はルサンチマンを含まず、西洋と日本と共に相対化し、倫理的主体としての個人そして信仰の群れを構築する可能性を含んでいる」とコメントした。

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 19日には講演会が行われ、木村ハンネローレ(言学寮運営)、道家弘一郎(聖心女子大学名誉教授)、大山綱夫(恵泉女学園短期大学元学長)の各氏が講演した。

 20日には、内村鑑三エッセイコンテストの授賞式も行われた。「後世への最大遺物」または「余は如何にして基督信徒となりし乎」を読み、「内村鑑三と私」「内村鑑三と現代」のいずれかのテーマでまとめたもの。小野寺友実(国際基督教大学1年)、尾崎太一(北海道大学工学部応用科学コース3年)、渡部和隆(京都大学大学院文学研究科キリスト教学専攻修士課程)の3氏が優秀賞を受賞した。

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