災害における弱者とどう寄り添う? キリスト教と社会制度を考えるセミナー NCCドイツ委員会×富坂キリスト教センター 2012年5月19日

〝原発事故は終わっていない〟 

 日本キリスト教協議会(NCC)ドイツ委員会(菊地純子委員長)と富坂キリスト教センター(岡田仁総主事)は、「災害における社会的弱者と教会はどう寄り添うのか?」と題して、キリスト教と社会制度を考える公開セミナーを4月27日、同センター(東京都文京区)で開催した(新教出版社との共催)。武藤類子氏(ハイロアクション福島40年実行委員会)と、佐藤信行氏(在日大韓基督教会・在日韓国人問題研究所〈RAIK〉所長=写真左下)が講師を務め、約50人が参加した。

「福島原発告訴団を立ち上げ」

 福島県田村郡三春町在住の武藤氏は、チェルノブイリの原発事故を通して原発の危険性を知り、原発の反対運動に身を投じてきた。

 「3・11以来、生活が一変してしまった。今までの暮らしがすべて失われたという状況で、この1年を生きてきた」と振り返りつつ、福島原発事故で国が行ったこととして、①情報の隠ぺい、②事故の矮小化、③放射線許容量の基準値引き上げ、という3点を指摘。

 また、高齢者や障がい者が避難所で主張ができずに具合を悪くしたり、車椅子で生活している人が避難所から追い返されるなど、社会的弱者のケアが十分に行われていない状況があったことを報告した。

 昨年の野田首相による原発事故「収束」宣言に対しては、「わたしたちにとって、この原発事故は何一つ終わっていない」と述べ、福島原発4号機に対する不安を口にした。

 さらに、除染作業の効果を疑問視した上で、「がんばろう福島」というスローガンのもとに復興が叫ばれていることを「空しく感じる」と述べ、「まだ何も終わっていないところで、復興はあり得るのだろうか」と主張。

 「原発事故は人と人との関係性を切り裂いていくもの」とし、郡山市の子どもたち14人が原告の「ふくしま集団疎開裁判」を例に、「過酷な事故に遭って、あらゆる権利の外に子どもはいる。全力で何とかしていかなければならない」と強調。事故を引き起こし、被害を拡大した東京電力および国の原子力委員会、原子力安全委員会、原子力安全・保安院などの責任者を告訴する「福島原発告訴団」を3月に立ち上げたことを報告した。

「これまでと違う地域社会を」

 佐藤氏は、被災地の外国人の状況を報告。災害救助法が適用された市町村の外国人登録者数は約7万5千人(2011年3月15日現在)。「外国人は都市部に半分、残り半分は漁村、農村に点在している」と述べ、震災から1年が経過した現在でも、外国人被災者に関する情報は断片的なものしかないことを説明した。

 被災地を訪問して実感したこととして、在日韓国・朝鮮人や留学生・研究者を除く外国人について、「『高台に非難してください』という言葉を理解できた外国人は少ない。ましてやこのような漢字を読むことができる外国人はいない」と述べ、言葉の壁を指摘する一方で、心の壁、制度の壁によっても生活再建が困難を極めていると主張。

 昨年9月には、「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)と「仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク」(東北ヘルプ)が、「外国人被災者支援プロジェクト」を立ち上げ、90年代以降に東北の農村・漁村に国際結婚で移住してきた中国人・韓国人・フィリピン人女性に対する調査を開始した。今年4月には東北ヘルプ内に日本人と外国人スタッフによる「外国人被災者支援センター」が設立された。

 佐藤氏は、「外国人被災者支援プロジェクト」も参画して今年3月~4月に行われた石巻市による「石巻市在住外国人の被災状況と多文化共生についてのアンケート」(日本語・英語・中国語・韓国語・タガログ語)を評価。被災した自治体による初めての調査で、400通中100通の回答があったことから、「外国人被災者が市に対して、そして日本社会に対して、自分たちが今どういう状況に置かれているのかということを記したい、伝えたいという思いがあったのだろう」と述べ、これまで外国人が訴える場所がなかったことを省みた。

 今後の課題としては、緊急支援だけでなく、中長期展望に立った「協働課題」を定立すべきだとし、「協働者」と「構想力」が必要だと主張。「震災前の矛盾が震災によって顕在化した。それを直視して、これまでと違った地域社会を作る働きをしていくしかない」と訴えた。

     ◇

 NCCドイツ委員会は、東日本大震災以降、福島の市民との関わりを模索しつつ、放射線測定器を配布する活動を推進してきた。災害によって社会的に弱い立場に置かれている人々、特に外国籍住民、移住労働者に対して教会がどのように寄り添うのかを問う中で、被災地の声や実際に現地で奉仕活動をする人々の体験を通して今後の方向性を考えようと、今回のセミナーを企画。秋に第2回の開催を予定している。

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