五十嵐弘志さんら「マザーハウス」設立 受刑者の更生と社会復帰支援 2012年8月18日

 受刑者の更生改善と社会復帰支援に取りくむ五十嵐弘志さん(48)が有志らとともに、民間非営利団体「マザーハウス」を設立した。刑務所などの矯正施設にいる人たちの更生および社会復帰の支援をすることが目的だ。7月28日、発足説明会を、聖イグナチオ教会(東京都千代田区)の一室で行った。

 五十嵐さんは前科3犯。受刑生活は20年近くに及ぶ。3度目の逮捕のとき、同じ留置場で日系ブラジル人キリスト者との出会いにより改心した。集会では、五十嵐さんの証とともに、監獄人権センター事務局の松浦亮輔氏が、受刑者処遇の現状、そして課題について話した。

 松浦氏は、医療問題の深刻さを挙げ、受刑者が身体の不調を訴えても医師の診察を受けられないことが発生していると問題視。「医師の診察が必要かどうかの判断を看護職員がしている。これは、研修を受けた刑務官が看護師資格を取得しているので、一般社会で医療経験のない人が診ている、ということだ」と述べ、実際の診察の要否を看護職員が判断している内情を明かした。

 さらに医師が認めても、保安部門が反対することで、外部の診療機関を利用できないという事態も発生している。このほか、社会一般の医療機関で処方されていた薬が刑事施設では処方されないといったケースがある。「一般社会でホルモンを注射して生活していたLGBT(性同一性障害)の人が、拘置所に入った途端に打ち止め。中に入ってからうつ病で非常に苦しんでしまうことも」。

 さらに面会や、信書の発受など「外部交通」の制限事例を解説し、社会復帰後の現状と問題点を話した。外部交通の制限のため、親族や友人との関係が希薄化していること、所持金の不足、「受刑者には権利がない」という思い込み、さらには出所者が頼る場としての「受け皿が不足」していることを指摘。「出所した人が、ネットカフェなどから『これからどうしよう』という悩みを監獄人権センターにも相談してきている」。

 刑期中に、障害者の介護をしていた五十嵐さん。そこは、受刑者同士で生活できない受刑者が集まってきている場であった。「初めは他人の下の世話に躊躇した。文通相手にそのことを書いたら、その人を自分のお父さんだと思いなさい、と。4年間ここで介護の仕事をしたが、神の深い愛を学んだ」。

 刑務所では受刑者の人権はない、と五十嵐さんは言う。「マザーテレサは日本にもカルカッタがあると言っていた。日本で最も闇深い場所は刑務所。刑務所にいる人に、人間は本物の愛に触れたら必ず生まれ変われることを伝えたい。受刑者が決して更生できないということはない」。

 受刑者と文通しているシスター湯原美陽子(ケベック・カリタス修道女会)は、「修道院には、ホームレスも来るし、刑務所帰りも来る。ある出所者はわたしのところに来た時すでに7犯だった。生い立ちを聞くと本当に愛されて育っていなかった。弟だと思って付き合っていたらいい。人として大事に付き合う、ということだ」。

 五十嵐氏の身元引受人となった佐々木満男弁護士も来場した。これまで40年国際ビジネスの場で弁護人をしていたが、今は1人で法律事務所を営んでいるという。「受刑者と我々は何も違いはない。むしろ彼らのほうが純粋だったりもする。身元引受人になったのは、五十嵐さんから直接手紙をもらったから。別に高尚なものがあったのではない。神さまがわたしを改めさせるためにやらせたのかもしれない」。

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