今、キリスト教研究の意義問う 日本基督教学会が関学で学術大会 2014年10月18日

 「キリスト教研究の可能性」と題する日本基督教学会第62回学術大会が9月9~10日、関西学院大学(兵庫県西宮市)で開催された。全国各地より研究者ら約180人が集い、研究発表と年次総会を行った。

 水垣渉氏(京都大学名誉教授)は「聖書的伝統としてのキリスト教」と題し、キリスト教とは何か、という問いをめぐるキリスト教学の学問的地平について、出発点としての多様性、多様性から全体性へ、聖書的伝統という三点から、人類にとって最も巨大な伝統である聖書的伝統を開くキリスト教研究の可能性について講演した。

 パネルディスカッションでは、氣多雅子氏(京都大学文学研究科教授)が反宗教・非宗教の観点から宗教哲学の足場を確認することで、キリスト教研究の固有性を浮き彫りにした。深井智朗氏(金城学院大学教授)は経済市場というメタファを用いて、総合的「キリスト教の文化科学」としての神学の刷新を提言した。柳澤田実氏(関西学院大学神学部准教授)は生態心理学の観点から福音書のイエスの行動を解釈し、キリスト教信仰の持つ身体性への注意を促した。

 パネリストそれぞれが、宗教哲学、神学、生態心理学の観点から主題について発表し、現代においてキリスト教を問い、学的研鑽を積むことの積極的意義について語った。会場からも活発な質疑応答がなされた。

 研究発表は聖書学から歴史神学、実践神学に至るまで幅広くなされた。

 渡辺和隆氏(京都大学文学研究科・博士課程)の「塚本虎児のヘブライ書解釈」と題した発表では、内村鑑三との連続性と塚本自身のキリスト教理解という二つの観点から分析がなされ、日本キリスト教史が一つ明るみに出された。

 会期中、関西学院大学の図書館が、所蔵する死海写本断片、エラスムス校注の新約聖書初版、グーテンベルク42行聖書など26点を特別展示し、多くの参加者が貴重な資料に触れる機会を得た。また学生たちによるスムーズな会場運営は、創立125周年を迎えた関西学院大学の「奉仕のための練達」の精神を発揮し、美しいキャンパスと共に学会に華を添えた。

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