〝哲学なしで生きられるのか〟 日本学術会議哲学委がシンポ 2016年1月23日

 昨年6月に文部科学大臣通知「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」が発表され、人文社会科学系大学・大学院の組織改編や廃止が議論される中、日本学術会議哲学委員会は「哲学なしで生きられるのか――大学における倫理・宗教・哲学教育の役割」と題するシンポジウムを12月12日、日本学術会議講堂(東京都港区)で開催した=写真。日本哲学系諸学会連合、日本宗教研究諸学会連合が共催した。

 第1部では、河野哲也氏(立教大学文学部教授)が「哲学と人文社会学の明るい未来――これは皮肉ではない」、香川知晶氏(山梨大学大学院総合研究部医学域教授)が「医学のなかの生命倫理――倫理なしの医学教育?」、竹村牧男氏(東洋大学学長)が「諸学の基礎は哲学に在り――『大学』における『哲学』の意義について」と題して報告。羽入佐和子(理化学研究所理事、前お茶の水女子大学長)、氣多雅子(京都大学大学院文学研究科教授)の両氏がコメントを述べた。

 第2部の討論に参加した若手研究者からは、人文社会科学系の学問を不要だとみなす実学重視の立場に対する危惧や、将来の就職への不安などが語られた。

 司会の藤原聖子氏(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)は、文系の学部に進学しても就職先がないことから受験生が理系に進学していると指摘。これに対して河野氏は、理系にもさまざまな分野があり、必ずしも産業界から歓迎されているわけではないと強調。加えて「日本はまだ高度な学歴社会になっていないのではないか」と述べ、学者になるだけが知的貢献ではないと主張した。

 最後に、日本学術会議哲学委員会委員長の戸田山和久氏(名古屋大学大学院情報科学研究科教授)が、「(社会の中で)哲学は非常に必要とされていると実感している」と話し、問題は哲学者にあると指摘。「文科省からの通達は、ある種のショック療法のようなもので、我々はそれをチャンスだと考えて、もう1回哲学教育のあり方、哲学者としての自分のあり方を反省してみる必要があるのではないか」と訴えた。

社会・教育一覧ページへ

社会・教育の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘