【画像】 『旧約新約聖書神学事典』刊行記念 廣石望ゼミ〝特別講義〟 事・辞典はこうして使いこなせ 2016年12月25日

【画像】 『旧約新約聖書神学事典』刊行記念 廣石望ゼミ〝特別講義〟 事・辞典はこうして使いこなせ 2016年12月25日

 年末から来年にかけて意欲的な大型出版が続く。教文館が刊行した『旧約新約聖書神学事典』(A・ベルレユング、C・フレーフェル編/山吉智久訳)もその一つ。明石書店からは『ビジュアル大百科――聖書の世界』(マイケル・コリンズ総監修/月本昭男日本語版監修/宮崎修二監訳)が出版され、年明けには『オックスフォード キリスト教辞典』(E・A・リヴィングストン編/木寺廉太訳、教文館)の刊行も控えている。
 『旧約新約聖書神学事典』は、ドイツ語圏を中心とした聖書学者15人による最新学説の集大成。「神観念」「救済論」「祭儀」をはじめとする12の「大項目」と、200の「小項目」項目で構成されており、宗教史、社会史、文献学、図像学、釈義など各分野の知見に触れることができる。今回の邦訳出版を喜ぶ立教大学文学部キリスト教学科教授の廣石望さんに、同事典の特徴から「賢い事典の使い方」に至るまで、存分に語ってもらった。あわせて同ゼミ生らの声も紹介する。


 この事典の特徴は、まず執筆者のチームワークが優れているという点。「総論」と「各論」に分かれており、教育的配慮が十分なされている。クロスレファレンス(関連項目を参照できる機能)が充実していて、屋根となる「大項目」と柱である「小項目」の対応関係が説明されているので、どこから入っても聖書神学全体を思いのままに「ネットサーフィン」できる。聖書神学という巨大な空間がある中で、つながりを見せてくれるわけです。「ハリー・ポッター」の図書館で階段が自在に動くようなイメージですね。そこまでよく練られた事典は他になかったと思います。
 訳者の山吉智久さんは良い意味でドイツ語圏神学の伝統を知っている人です。近年のキリスト教学の弱点は、専門のことしか研究しないこと。聖書学をする人は教会史を知らない。組織神学をする人は美術のことを知らない。新約の中でも、「俺はパウロをやるから、お前はマルコをやれ」とか、考古学者が論じていること、ユダヤ学、西洋古典学のことを知らないということがある。
 この事典が果たす役割は、キリスト教会が解釈共同体として受け継いできたテキストを、近代歴史学、文献学、考古学や図像学を総合しながら解釈し続けるという営みです。
 それはやはり、大学や研究者間のネットワークと蓄積があったからこその成果だと思います。私も執筆者として携わった『新約聖書解釈の手引き』(日本キリスト教団出版局)に対して、「みんな仲が良い」という反応が多く寄せられました。研究者の間では、持てる力を結集しなければ学問が死に絶えるという危機感は共有しています。そのために何度も会合を重ねてコンセンサスを取りました。今後、大きな事典の編纂作業をする場合は、さらに広くキリスト者以外の研究者にも協力を要請しなければならないでしょう。

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