【画像】 人々の心支える宗教者の社会活動 日本宗教連盟セミナーで現場から報告 2017年4月8日

【画像】 人々の心支える宗教者の社会活動 日本宗教連盟セミナーで現場から報告 2017年4月8日

 「宗教者が担う社会活動――宗教教誨師、チャプレン、臨床宗教師の現場から」と題した宗教文化セミナーが3月13日、聖路加国際病院トイスラーホール(東京都中央区)で開催され、約80人が参加した。日本宗教連盟(東京都港区、植松誠理事長=日本聖公会主座主教)が主催したもので、今回が5回目の開催。
 講師は、猿渡昌盛(府中刑務所教誨師、大國魂神社宮司)、ケビン・シーバー(聖路加国際大学キリスト教センター主任チャプレン、日本聖公会聖路加国際大学聖ルカ礼拝堂司祭)、鈴木岩弓(東北大学教授)の3氏。宗教教誨師、病院チャプレン、臨床宗教師育成というそれぞれの立場から人々の心を支える社会活動について語った。
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 まず猿渡氏が「府中刑務所の教誨に付いて」と題し講演。教誨には法務教官や刑務官が行う「一般教誨」と、神父、牧師、僧侶、神官ら宗教者が行う「宗教教誨」があり、3月8日現在府中刑務所に勤める宗教教誨師43人の内、神道系が7人、仏教系が26人、キリスト教系が10人在籍していると紹介した。また府中刑務所では宗教教誨の一環として大祓などの儀式を行っていると述べ、「大祓を行う宮司は、罪や穢れが祓われ清浄を表す白い色の衣装を身に着ける。白はどんな色にも染まるが、大祓で清めることによって皆さんも白い色に戻ることができると受刑者たちに伝えるようにしている」と語った。
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 続いて「臨床現場におけるスピリチュアルケア――チャプレンの視点から」と題しシーバー氏が登壇。
 まず、病院チャプレンとは患者や家族のスピリチュアルケアを専門とする聖職者を指し、欧米の医学界では当たり前に存在するものだと紹介。その基本姿勢は「話すより聴く」「相手の宗教心は問わない」「相手を判断せず受容する」「あらゆる精神的苦痛に取り組む」ことであり、関わる人々の8割が無宗教であることもあり、その役割は布教や宗教教育ではないとし、牧師との立場の違いを強調した。
 また死に向き合わざるを得なくなった患者が抱く「スピリチュアルペイン(霊性の痛み、苦悩)」は、生きる意味を失う、苦難の意味を問う、喪失感、死後の世界への恐れ、超越者(神など)への怒りなどに分類できると解説。スピリチュアルペインには個別の対応が必要であるとし、死後の世界について質問をする患者は天国について知りたいのか、それとも死へのプロセスが不安なのかを見極める必要があることや、死を突き付けられた患者が超越者に対し抱く怒りを、チャプレンとして神の代理で受け止めることなどを例に挙げた。
 スピリチュアルケアで目指すことは、患者の疑問に答えを出すことではなく、患者が感情を表現し解決を求める作業が心身の回復につながるよう、個々に内在する心理的強みを引き出す手伝いをすることだと主張。また終末期にある患者は無宗教であってもほとんどが専門家による祈りを歓迎するとし、祈る際には患者の不安や望みを反映させる必要があると訴えた。最後に患者が自分らしい最期を迎えるために、精神的苦痛が緩和され勇気と尊厳をもってその人生が全うできる支えとなることが肝要だと締めくくった。
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 次に、宗教民俗学が専門の鈴木氏が「公共空間における『臨床宗教師』の立ち位置」と題し講演。同氏はまず、臨床宗教師養成開始の経緯を説明した。
 2011年の東日本大震災を受け同年5月に東北大学宗教研究室を事務局とした「心の相談室」が開設され同氏は事務局長を務めた。この相談室は、宗教者が遺族に対し弔いからグリーフケアまでの一貫した支援を超宗教的に行うことを目的としている。その働きを担う「臨床宗教師」を養成するために、12年4月には同大大学院文学研究科内に「実践宗教学寄付講座」が誕生。16年までに152人の臨床宗教師を輩出、日本各地で活躍している。現在は上智大学(東京都千代田区)、龍谷大学(京都市伏見区)など計9大学が同様の講座を持ち、16年2月には全国組織「日本臨床宗教師会」が発足した。
 同氏は「臨床宗教師はキリスト教でいうチャプレンにあたる」と指摘。東日本大震災以降、宗教の公共的活動が表面化したとし、臨床宗教師の活躍は、宗教の公共性を問う好機となると強調。臨床宗教師養成は、これからの超高齢化多死社会に発信するものがあると締めくくった。
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 最後に宍野史生氏(日本宗教連盟幹事、教派神道連合会理事)の司会で鼎談が行われた=写真。宗教観について「一つの宗教を極めている人は他の信仰を持つ人にも寄り添える」(鈴木氏)、「常にキリスト教のフィルターを通してものを考えるが、それを相手に押し付けることはしない」(シーバー氏)、「ほとんど教義のない神道は一つの宗教にとらわれない良さがある」(猿渡氏)とそれぞれに意見を述べた。

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