【画像】 昭和初期の宣教師夫人の実像紹介 明治学院歴史資料館が『東京がたり』刊行 2017年5月20日

【画像】 昭和初期の宣教師夫人の実像紹介 明治学院歴史資料館が『東京がたり』刊行 2017年5月20日

 明治学院歴史資料館(東京都港区)は同資料館資料集の第12集として『東京がたり』を刊行した。
 米国長老教会海外伝道局が無料配布用に作成した小冊子(原題〝Telling Tales on Tokyo〟)を日本語に全訳したもので、昭和初期に東京で活動していた宣教師らのエッセイを収録している。原書は表紙に竹の皮が用いられ、日本で印刷されている。出版年は記載されていないが、記述内容から1930年代半ばに作成されたものと推察される。
 訳者の齋藤元子氏(同資料館研究調査員)の解説によると、同書は全米各地の長老教会で配布されたと考えられる。宣教師たちが体験している東京の日常を伝えることを通して、教会員に海外伝道に対する関心を促し、支援の献金や宣教師を志す気持ちを喚起することが目的であったという。
 収録された八つのエッセイには、明治学院や女子学院、日本聾話学校など、宣教師たちが関わってきた教育機関やセツルメント、ハンセン病療養所などについて記されており、賀川豊彦や河井道の名も登場する。
 明治学院では、歴史資料館と大学図書館で2冊の原書を保管しているが、当時の発行部数や現存数などは不明だという。
 同書を翻訳した目的について齋藤氏は、「明治学院は長老教会が母体となって設立された。設立期に関わりのあったヘボンやフルベッキ、ブラウンなどの宣教師に注目が集まりがちだが、それ以降も多くの宣教師が来日した。特に宣教師夫人が社会福祉や女性のサポートなどを行ってきたが、ほとんど知られていない。そうした人たちに光を当てたかった」と話す。
 「独身の女性宣教師と宣教師夫人にはそれぞれ役割分担があったようだ。女性宣教師は女性海外伝道協会から派遣され、主に女子教育を担っていたが、今回、宣教師夫人が社会福祉やセツルメント活動に関わっていたことが分かった。本書は複数の宣教師夫人がエッセイを寄せており、自らが語っている部分も多くあるので、その実像を紹介するよいテキストになるのではないか」
 同書に寄稿している宣教師夫人について、齋藤氏は訳者注として簡単な経歴を記載しているが、調査に苦労したという。序文を執筆しているコンスタンス・ハロックという人物についても伝道局の編集スタッフということ以外不明な点が多く、同書を日本で編集したのか、執筆者をどのように選んだのかなどは分からない。
 八つのエッセイのうち、「平和の預言者たち」のみ執筆者名が記載されておらず、ハロック自身が書いた可能性もある。このエッセイでは4人の日本人が紹介されているが、賀川豊彦と河井道以外は、「ミスターH」「ミスターK」とイニシャルで表記されている。「K」は小崎道雄の可能性が高いと齋藤氏は指摘しているが、「H」については未だ特定できていない。
 序文には本書が日本で印刷したことが明記されている。原書は竹の皮の表紙に緑色のインクで竹のイラストと笹の葉に見立てたタイトル文字が描かれ、緑色の糸で和綴じされている。当時多くの宣教地がある中で、米国から献金を募るために日本の宣教師による積極的な働きかけがあったのではないかと齋藤氏は推測する。「米国サイドとしては日本も中国もインドも同じ宣教地。日本だけに力を入れるわけにはいかない。日本の宣教師たちが、米国で日本での活動を理解してもらい、若者に宣教師としての志を持ってもらいたいと、日本的な本を作ったのではないか」
 齋藤氏はこれまで『バラ学校を支えた二人の女性――ミセス・バラとミス・マーシュの書簡』と『ウィリアム・グリフィスと米国長老教会女性海外伝道協会』の2冊を歴史資料館資料集の第10集として刊行してきた。今後は同学院の設立母体の一つ、米国オランダ改革教会に関する文献を刊行したいとしている。
 『東京がたり』の序文と各エッセイは、日本語訳に続けて原文の画像も掲載されている。英文と対比しながら読むことができ、挿絵から原書の雰囲気も味わえる。A5判、定価600円(税込、別途送料180円)。注文、問い合わせは同資料館(℡03・5421・5170、Eメール=shiryokan[アットマーク]mguad.meijigakuin.ac.jp)まで。

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