被災教会から見える現代社会の課題 大雨による二次被害も懸念 2018年7月11日

 6月18日7時58分ごろ、最大震度6弱を観測。今回の地震は、関西大都市圏のベッドタウンである大阪府大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市などの北摂地域を直撃し、多くの家屋が被害を受けた。さらに、7月5日未明から続く激しい雨によって雨漏りなどの二次被害も心配されている。被災地域の教会の現状と必要を知るため、震源域近くにある日本バプテスト同盟高槻バプテスト教会を本紙記者が訪ねた。

高齢世帯が抱えるジレンマ
「地域のためにできることは少ないが…」

 2013年9月以来、同教会に務める牧師の中野博誉(ひろお)さんによれば、教会付近では、建物家屋のひび割れが多く見られるという。確かに教会の壁面には亀裂が入り、塗装剤がはがれ落ちていた。向かいに見える建物にも同様の亀裂が見てとれる。会堂の内壁には亀裂と壁紙の浮きがあり、揺れの強さを物語っている。当日、強い揺れによってオルガンの向きが変わり、ピアノの位置がずれ、講壇上に掲げられた聖句の額は7cm移動していた。

 今回の地震において、人的被害とインフラ寸断の次に大きなものは、屋根瓦の落下による二次被害だった。落ちた瓦が、隣家の自家用車や窓にあたり破損した。確かに京都と大阪をつなぐ阪急電鉄、京阪電車の車窓からはブルーシートがあちらこちらに見えている。いずれも安全確保と雨漏りを防ぐためだ。しかし、地方自治体からは1世帯につき1枚しか支給されない。重なるブルーシートの数に自治体と被災世帯の苦労がしのばれる。

 中野さんは言う。「阪神・淡路大震災を京都で経験しました。今回の地震が、これまでの大震災と違う点は、物流とインフラがあそこまで破壊されなかったこと。電気、ガス、水道など生活インフラはいまだ復旧の最中ですが、完全に破壊されたわけではありません。また家屋も外から見る分には全壊しているものはほとんどないと思われる。しかし、だからといって被害がわずかというわけではない。外からでは見えない内側の被害が大きいのです」

 近づいてみると、建物家屋の外壁の損傷は、遠くから見るよりも多い。関西大都市圏のベッドタウン、北摂地域に位置する高槻市は住宅密集地でもある。市内をめぐれば、被災建築物応急危険度判定の貼紙(赤色は危険、黄色は要注意、緑色は調査済)が目立つ。しかし屋内被害は外からは見えない。

 中野さんによれば、牧師館内部も、物が落ち、棚が倒れて大きな被害を受けたという。そして、そこに今回の地震の課題があるという。すなわち、地震後の片付けだ。被災家庭が高齢世帯や独居老人である場合、当然、本人だけで片付けるのは無理がある。しかし、行政であれ教会のような任意団体であれ、ごく私的な空間に踏み込んで助けることはそもそも難しい。特に善意による支援者が手伝いに来ても、被災者が逐一指示をすることに疲れてしまう。つまり、支援者のペースで行う援助は、被災者にとって負担となる。同時に、高齢被災者のペースだと、片付けも日常への復帰もままならなくなるというジレンマが発生する。

 他にも無料の法律相談の需要があると中野さんは話す。例えば、隣り合う世帯が、共に高齢者であり、互いの建物の構造物が隣家への物損被害を与えた場合、あるいは最悪、人身に被害を与えた場合、間に第三者の仲裁が必要となる。両者が互いに納得して日常に戻るために、法的な仲介と裁定が必要なのだ。市役所などにおける無料相談窓口が十分に機能することを願うものである。

 また情報格差とそのケアについても中野さんは指摘する。これだけインターネットとスマホが普及しても、高齢者の多くが十分に使いこなせるわけではない。そのような中で「物流とインフラが崩壊、復旧の見込みなし」などの流言飛語に、不安を煽られる高齢者も多かった。結果、水、お茶、カップ麺、卓上コンロが売り切れた。余震への警戒は必要であり、現地の被災状況を報道することも重要であるが、同時に若者のようにリアルタイムで情報を追えない人々へのメンタル・ケアも必要となる。

 高槻バプテスト教会は、毎年、防災対策として火災時を想定した避難訓練を行ってきた。訓練時、老齢のため体力的な問題で動けない信徒もいた。しかし、地震に備えた避難訓練は行わなかった。地震対策の難しさがにじむ。

 日本国際飢餓対策機構からの支援の問い合わせ、また関係諸教会からの援助連絡も来た。しかし、善意の援助申し出に対応することに時間を取られてしまい、すぐ隣で助けを必要とする人のもとに行けないジレンマもあった。被災者と支援者の適切かつ円滑な連絡と関係構築という課題の狭間で、見逃される高齢者なりの問題が浮き彫りとなった。

 しかし、その中でも教会と地域の連携があった。高槻バプテスト教会に集う地域の方とは緊密な連絡と助け合いがあった。またSNS上にある「クリスチャン地震被災状況」や「北摂地区牧師会」における情報交換と連携も大きな力となった。

 被災後、最初の日曜日、高槻バプテスト教会は予定通り、コンサートを開催。中野さんはピアニストとして活躍もしている。使徒言行録16章で、パウロとシラスが入獄後、地震にあっても適切に行動し、隣人に希望を提示したことに倣いたいという祈りから、曲目を変更して演奏した。

 震源よりほど近い京都市内でも震度5強を観測。関西分室を置く京都大学文学部新館もエレベーターが緊急停止するなど広範な地域に影響が及んだ。

 地震発生から10日後の6月28日、再び高槻市を訪れ、今度は、久遠キリスト教会関西集会牧師の田中殉(もとむ)さんに話を聞いた。同教会は、公的施設の会議室を借りて礼拝を行っているが、6月24日は施設安全点検のため集まることができず、各自が自宅で礼拝を持つことになった。

 「子どもたちには避難所までの行き方を教えました。最悪の場合、一緒に行けるかは分からないから、しっかり教えておかないといけない。このような状況で、地域のためにできることは少ないのですが、団地のおばあさんを訪ねてガスの復旧のことを教えてあげたり、セーフティーボランティアで登下校の子どもたちに声をかけたりしています。町は少しずつ平常に戻ってきています」

 北部大阪地震で浮き彫りになった高齢被災者の課題は、教会の地域貢献のあり方を問うている。

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