香港の抗議活動にカトリックが担う役割をBWが解析 2019年8月21日

 香港の抗議活動が続いている。『ビター・ウインター』(BW)は、「新たな天安門事件になるとも考えられている。人権保護の活動家は、米国及びドナルド・トランプ大統領の姿勢が、抗議活動の運命を決定し、さらに中国共産党内の習近平主席に対する敵対勢力を作り出す、または、勢いを与える可能性があると推測している」と解析している。

 2018年5月に「中国における信教の自由の迫害と人権に関する」メディアをイタリアのトリノで開始した『ビター・ウインター』は、「その直後より、人に知られることが少ないメディアではなく、中国共産党から大きな頭痛の種とみなされるメディアへと成長」した、と自認している。その『ビター・ウインター』が、香港の抗議活動を取り上げる中で、バチカンからも頭痛の種とみなされるような解析にまで踏み込んでいる。今回の解析は『ビター・ウインター』のマッシモ・イントロヴィーニャ編集長自身が行っていることも注目される。

 解析のあらましを紹介する。

 香港の一部の人々は、トランプ大統領と習近平主席に加え、第三世界の指導者の選択が香港の未来に大きな影響をもたらすと考えている。その指導者とは教皇フランシスコだ。香港のローマ・カトリック教会の信者は、香港の人口の5%に過ぎないが、政治、文化及びメディアにおいて不釣り合いな力を有している。林鄭月娥(ラムチェン・ユッコ)香港特別行政区行政長官自身もカトリック教徒であり、カトリックの学校で教育を受けた。また、重要な政治の事案に関してカトリックの司教に定期的に相談していることは周知の事実である。林鄭長官が中国共産党寄りの立場を取っていることが、抗議活動に拍車をかけている。

 香港は伝統的にバチカン(ローマ教皇庁)と中国との橋渡し役を務めてきた。バチカンと中国の関係の専門家によると、2013年にフランシスコが教皇に就任する前は、反共産党の陳日君(チャン・ヤックワン)枢機卿(元香港教区司教)の影響力により、神父と司教の間に、中国政府が管理する『中国天主教愛国会』への参加を勧める共産党とのいかなる協定にも、強い反対が起こり、功を奏していた。その影響力はバチカンにも及んでいた。この専門家によると、陳枢機卿はサレジオ会の同僚である韓大輝(ホン・タイファイ)大司教(香港生まれ)と最強のタッグを組んだという。韓大司教はバチカンで最も影響力の高い中国の司教であり、2010年以降、福音宣教省の長官を務めていた。この機関は中国を直接担当するバチカンの部局だ。陳枢機卿と韓大司教はベネディクト16世と親交があり、事実上、カトリックの神父と司教に天主教愛国会への参加を勧める、または強制する全ての協定を妨害してきた。2人は後に大司教となるエットーレ・バレストレロ神父の支持を得ていた。バレストレロ神父はバチカン国務省の上位の政務官であり、中国共産党に断固として反対する立場を取っている。

 2013年、ベネディクト16世が退位し、フランシスコが教皇に選ばれた。教皇フランシスコは外交の優先事項の一つとして、反中国共産党のカトリック教徒に「犠牲」を求めた。それは中国政府との合意を示唆していた。

 陳枢機卿が2009年に退任すると、後任として(後に枢機卿となる)湯漢司教が就任した。湯漢司教は陳枢機卿ほど中国共産党を敵対視しておらず、いかなる問題に対しても(前任者の陳枢機卿とは異なり)バチカンを批判することもなかった。

 バチカンが香港で非常に用心深い行動を取っていることは、14年の補佐司教2人の任命から見て取れる。1人は反中国共産党として知られる聖フランシスコ会の夏志誠(ハー・チシン)、もう1人は中国との合意に前向きな李斌生(リー・バンサン)だった。李補佐司教は「オプス・デイ」に所属し、神学的には保守派と見なされている。

 しかし、16年から17年にかけて状況は変化し、18年のバチカンと中国間の合意に関する特定の決定が既にバチカンで行われていた可能性がある。韓大司教は16年にバチカンから外され、グアムに派遣された。グアムでは、前司教が性的虐待のスキャンダルに関与したとして辞任しており、その対処のためとされた(内部筋によると、この人事に関しても中国共産党がバチカンに謝意を示したようだ)。その後、韓大輝大司教は教皇使節としてギリシャに派遣される。

 2016年、香港の李補佐司教がマカオ司教に昇進した。この人事にも中国共産党は感謝したという。

 その結果、激しい抗議活動の中、香港カトリック教会を導く役割を湯枢機卿が担うことになった。湯枢機卿はカトリック教徒の林鄭月娥長官に、物議を醸し出している逃亡犯条例の改正案への署名に反対することを推奨し、その他の宗教の指導者たちも抗議活動者をある程度支持していた。

 湯枢機卿は、香港のカトリック教徒に対して、バチカンと中国間の合意に対する陳枢機卿の強い非難を支持しないことを伝えた。その一方で夏志誠補佐司教による抗議活動への積極的な参加を阻止しないどころか、道徳心の高い指導者の1人と見なした。

 バチカンは香港の抗議活動に関して沈黙を貫いている。しかし、遅かれ早かれ言葉ではなく、重大な決定を介して立場を表明するべきである。湯枢機卿は80歳であり、職務への復帰はあくまでも一時的であることを明言していた。間もなく教皇は新しい香港の司教を選ばなければならない。現地のカトリック教徒は抗議活動を大々的に支持し、夏補佐司教が任命されることを希望している。マカオの李司教が任命される場合、抗議活動の参加者は抗議活動と民主主義に反対する行動の現れだと見なすだろう。

 いずれ分かることだが、夏補佐司教の任命は、中国共産党と国際社会に対し、バチカンが香港の民主主義を支持していること、そして、人権問題をバチカンが軽視していたために、2018年の合意が実現したわけではないことを示す効果がある。李司教の任命は反対のメッセージを送ることになるが、李司教は一筋縄ではいかない性格の持ち主であり、同氏が無条件で中国共産党を支持していると見なすことは間違いだ。同様に、夏補佐司教が陳枢機卿によるバチカンに対する真っ向からの批判を支持したことはない。教皇フランシスコが再び第三の候補者を「考案」して世間を驚かす可能性がないわけではないが、今のところ手掛かりや噂は聞こえてこない。(CJC)

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