「無縁社会」めぐり宗教者がシンポ 遺骨の引き取り拒否も 2011年3月12日
財団法人国際宗教研究所(島薗進所長)は2月19日、公開シンポジウム「無縁社会と宗教者――新しいネットワークの創出」を大正大学(東京都豊島区)で行った。不登校、ひきこもり、若者の自殺、路上生活者、高齢者の孤独死など、いわゆる「縁」から切り離された人をとりまく問題が珍しくなくなりつつある。これらの課題に対し、地域社会で活動するキリスト教、仏教、神道、新興宗教の宗教者がそれぞれの実践から語った。
司会を務めた同研究所評議員の弓山達也氏(大正大学教授)は、「『無縁社会』については宗教紙でも取り上げられ、NHKの番組でもキャンペーンが行われた。宗教は縁を回復する機能をもっているが、わが国に蔓延する特有の宗教アレルギーは、この問題に対し正面から目をそらしがち」とあいさつ。
スゥデーデンボルグ派の単立教会「東京新教会」牧師の國枝欣一氏がパネリストとして登壇した。同教会では、社会参加の困難な青年が集うオープンスペース〝Be!〟とホライズンスピリチュアルケア研究所の2団体が活動している。〝Be!〟で、不登校の子どもを相手に活動する中、「18歳の子がいる居場所がないことに気付いた。精神障害があるわけではないので行政にもみてもらえず、社会にかかわっていくことが難しい」と國枝氏。
家族の中にいても孤立する人の存在を、実際に相談されたケースを例に説明。ホライズン研究所の存在は「孤立している人の魂の世話をすること」にあると話した。
「他の人に仕えるためにも自分の傷を知る。自分の経験に精通し、より正確に、より的確に表現できることを得た人、修練した人が他の人の話を聞くことができる」
真宗大谷派僧侶で孤独死や自殺の問題に取り組む中下大樹氏は、これまで2千人を超える人の死の瞬間に立ち会ってきた。生活困窮者の葬送を支援する「葬送支援ネットワーク」の代表を務める。中下氏によると、現在、東京23区内の約3割が、死後、通夜や葬儀を一切行わず火葬場に運び荼毘にふす直葬だという。自殺者も含め、引き取り手のない遺骨を去年だけで100件引き取ったという中下氏は、最近、遺族が遺骨の引き取りを拒否することも多いと指摘。
「父と母がいて生まれてきたのであって、無縁社会という言葉に違和感がある。親戚がいても何十年も会っていないから困るというケースもあり、縁が機能していないことが大問題」「人と人が本当に心の底から語り合えない時代。家族という最後のセーフティーネットの中でも生と死について語り合えない。人間関係のわずらわしさがあるから皆都会に出てくるのだが、その結果、高齢者の孤独死が増えた」
ほかに、土生神社宮司の阪井健二氏、金光教羽曳野教会長の渡辺順一氏がパネリストとして語った。