ホーリネス教団が性暴力事件で検証 2011年4月9日
日本ホーリネス教団(郷家一二三教団委員長)は3月21日、国立オリンピック青少年総合センター(東京都渋谷区)で開催した第48回教団総会において、「K元牧師性加害事件検証報告」を採択した。
これは、キリスト教系のラジオ番組や雑誌などで広く知られた同教団所属の小松栄治郎牧師が、家族ぐるみで親交のあった教会員の女性を自身が主宰する「星の子どもたち」のスタッフに抱え、性的暴行を繰り返し、結果的に自死に追いやったことに対して、「事実を検証し再発防止に努めてほしい」という母親からの強い要請を受け、2005年に立ち上げた人権対策室が2年余にわたり調査した内容をまとめたもの。
「過去の問題を蒸し返すことや、K元牧師を糾弾すること」が検証の目的ではなく、「今の私たちの福音理解と、教会としてのあり方が問われている問題」であり、「閉鎖的で他の介入を受けにくい」教会が抱える普遍的課題としてとらえ、牧師も信徒も「事実を見極めなければならない」と訴えている。
今後の課題としては、「啓発活動」「教育活動」「体制」の3点を挙げ、「加害責任を負った教団として……神と人との前に責任を果たせる教団への変革を図っていく決意を新たにするものである」と結んでいる。
この事件は、日基教団、日本聖公会などの事例と共に週刊誌「AERA」08年4月14日号(朝日新聞出版)の「キリスト教会の『性犯罪』」と題する記事でも取り上げられ、教界内外に大きな波紋を呼んだ。
人権対策室長の島津吉成氏(辻堂教会牧師)は、「総会では多くの代議員が被害者の立場に立って受け止め、前向きな意見を出してくれた。今回の内容を各教区や教会で深め、広く浸透できるよう努めたい」と話す。
今回の総会は母親である宮本晴美さんも傍聴し、審議の過程を見守った。当初は「聞く耳を持たなかった」教団が、自らの加害者性も認識した点を評価しつながら、実名を出さないことで事件が曖昧になるのではないかとの危惧も抱く。
「今後のかかわり方についても具体的なことを書いてほしかった。教会には、教団という組織を超えたネットワークを作って、同様の被害を未然に防ぐための機能を備えてほしい。今をくぐり抜けるためだけの検証だったら意味がない。今後、100年先でも通用するような作業の見直しを期待したい」
また、総会後には教団関係者と共に、小松氏が営む神奈川県平塚市の私設保育園を訪れ、小松市夫妻とも面会した。1時間ほど話をしたものの、小松氏は「合意のもとでの行為」という公判時の主張を繰り返すばかり。
報告の全文は教団のホームページから読むことができる。http://www.jhc.or.jp/kensyou.html