教皇 イタリア放送番組で質問に回答 「わたしも自問している」 2011年5月7日
教皇ベネディクト16世が、イタリア放送協会(RAI)の信者向け番組「ア・スア・イマジネ」(彼のイメージ)で視聴者からの質問に答えた。同番組のインターネットサイトで公募された約2千のキリスト教に関する質問の中から選んで回答した。
番組は事前にバチカン(ローマ教皇庁)で録画され、4月22日、キリストの受難を記念する聖金曜日に放映された。教皇がテレビを通して人々の質問に答えるのは初めて。
質問は全部で七つあり、最初に千葉市美浜区在住の松木エレナさん(7)が自宅マンションのベランダで撮った日本語のビデオレターによる質問に答えた。エレナさんの父親はイタリア人で、母親が日本人だという。
エレナさんは地震発生時、10階の自宅に日本人の母親と一緒にいて、強い揺れを何度も経験。同年代の子どもがたくさん亡くなったことを知り、教皇に質問をしたような疑問を抱いた、とベネチア近郊に住む祖母ジアーナ・デル・リオさん(63)が語った。
他には、イタリア人の母親から2年間植物状態にある息子について、イラクの信者から迫害下にあるキリスト者の状態について、コートジボアールのイスラム教徒の女性から分裂した国に平和を再びもたらすにはどうしたらよいか、などの切実な体験からくる質問、さらにイタリアの信者たちからイエスの復活や聖母マリアについて問うものが続いた。
バチカン放送(日本語電子版)によると、エレナさんの質問と、教皇の回答は次のようなもの。
質問=「わたしの名前はエレナです。日本人で7歳です。今、わたしはとっても怖いです。大丈夫だと思っていたわたしのお家がとても揺れたり、わたしと同じ年くらいの子どもがたくさん死んだり、外の公園に遊びにいけないからです。なんで子どももこんなに悲しいことにならなくてはいけないのですか。神さまとお話ができるポープ(教皇様)、教えてください」
教皇の答え(要旨)=「わたしも同じように自問しています。どうしてなのか? 他の人たちが快適に暮らしている一方で、なぜ皆さんがこんなにたくさん苦しまなくてはならないのか? わたしたちはこれに対する答えを持ちません。
でも、イエスが皆さんのように無実でありながらも苦しんだこと、イエスにおいて示された本当の神さまが、皆さんの側におられることを、わたしたちは知っています。たとえわたしたちが答えを持ち合わせていなくても、たとえ悲しみは残っても、このことはわたしにはとても大事なことに思われます。神さまが皆さんのそばにおられるということ、これが皆さんの助けになることは間違いありません。
今、大切なことは、『神さまはわたしを愛しておられる』と知ることです。それはたとえ神さまが自分を知っているように見えなくてもです。いいえ、神さまはわたしを愛してくださり、わたしのそばにおられるのです。そして、世界で多くの人たちが皆さんに心を寄せ、皆さんのことを思い、皆さんを助けるために、何かできる限りのことをしようとしているということを知って、心強く思ってほしいのです。
いつかこの苦しみが無駄ではなく、その後に良い計画、愛の計画があることを理解できる日が来るでしょう。安心してください。わたしたちは、あなたと、そしてすべての苦しむ日本の子どもたちと共にいます。わたしたちは、祈りと行いを通して皆さんをお助けしたいと思っています」(CJC)