福島原発 後遺症はこれから 広島の被爆医師が証言 2011年9月10日
〝今は草の根でつながれる〟
東京・関東キリスト者平和の会(滑川静夫代表委員)は8月15日、日基教団北千住教会(東京都足立区)で「ノーモアヒロシマ・ナガサキ/ノーモアフクシマ」と題する講演会を開催した。震災後も「被爆医師」として内部被曝の実態などを訴え続ける肥田舜太郎氏が招かれ、約60人の参加者が講演に耳を傾けた。
肥田氏は、被爆直後から体験した広島の惨状を克明に証言した。8月6日、たまたま爆心地から約6㌔の農村へ往診に出かけていたため生き残ったという同氏は、当時25歳の軍医。爆心地から次々に逃れてくる被爆者たちを前に呆然と立ちつくし、「生きた心地がしなかった。地球の最後に一人で立っているような感覚だった」。
村の道路や学校の校庭に焼けただれた人々が1千人余。後の記録によると、その日から23人の医師と一緒に延べ2万7千人の被爆者を診た。
3日目の朝から患者に熱が出始め、口内からは腐敗臭が漂い、火傷していない皮膚に紫斑が現れ、髪の毛が「取れた」。重症でものも言えないような女性が、自分の髪の毛を手にとって大きな声で泣くのも目の当たりにした。最後には鼻と口から血を吐き、真っ赤な血の海の中、のたうちまわりながら死んでいく。これが放射線の急性症状だと後に知った。
戦後マッカーサーが、「被爆者が訴えている症状はすべて米軍の機密だから、絶対に他言してはならない」と厚生大臣に伝えたと聞き、怒りがわいたという。
原発事故後の福島では、赤ちゃんに初期症状が出始めていると肥田氏。「あと半年から1年で、広島、長崎と同じ後遺症が出始めるだろう」と指摘する。「自分たちだけは何とか逃れたいと思っている親もいるが、いくら野菜や水を摂らないようにしても、護り切れるはずがない。覚悟を決めた上で、健康な体を維持し、病気にかからない努力をするしかない。こんな狭い国に原発をいくつも作ったことが大間違い」と強調。
さらに、「これまでも、事故が起こった翌日に電力会社の所長が安全宣言をしたりしてきたが、放射線の被害があるかどうか判断するには、専門の医者でも最低3カ月かかる。騙されてはいけない」「放射線被害についてもっと知ってほしい。真実が通らなければ世の中は良くならない。かつては政治的な課題について一つになりにくいという背景があったが、今は草の根でつながるのは難しいことではない」と訴えた。
講演に続き、日本福音ルーテル稔台教会牧師の内藤新吾氏(「原子力行政を問いなおす宗教者の会」事務局)が浜岡原発の危険性などについて報告した。教会外から参加した女性は、「宗派を超えて、教会が勉強会を開催するのは素晴らしいこと。ぜひ、これからも核廃絶のために非宗教者と宗教者が連携してほしい」と感想を述べた。