日本聖書協会 聖書新翻訳事業で初の全体会議 書名変更の可能性も議論 2011年10月1日
日本聖書協会(大宮溥理事長)は、2016年の完成を目指して昨年から開始した聖書の新翻訳事業について、8月24~26日、都内で検討委員会、翻訳者会議、全体会議を開催した。翻訳者会議と全体会議は、今回が初めての開催となる。
検討委員会は、主要17教派から派遣された計19人の代表者(別表)で構成されている。重要な訳語などに関する統一見解を論じる委員会で、これまでに2回(昨年9月、今年1月)行われた。3回目となる今回は、聖書各書の書名変更の可能性などが論じられた。
翻訳者会議は、カトリックとプロテスタントの原語担当者と日本語担当者が一堂に会して翻訳実務に関する案件を話し合う会議。1回目の今回は、両担当者46人のうち42人が集まった。現在、聖書57書ごとに翻訳チーム(原語担当者と日本語担当者)が設けられており、その中の一つのケーススタディが報告された。また、翻訳事業支援ソフトである「パラテキスト」を使った翻訳作業の実例も紹介された。
検討委員と翻訳者が合同で話し合う全体会議では、主に聖書で二人称の「お前」を使用することの是非、「女性」「子供」の記述、そして“霊”の表記などについて話し合いの時が持たれた。
同協会はこれらの会議のために、オランダのライデン大学名誉教授で、世界的なセム語言語学者である村岡崇光氏を招いて講演を依頼。村岡氏は、全体会議では「東西の狭間に立って」という題で話し、翻訳者会議では「聖書翻訳における70人訳の位置づけ」と題して、死海写本発見にともなって70人訳聖書テキストの重要性が本文批評において増したことを語り、また、新約聖書の成立に与えた影響を指摘した。
次回の検討委員会は来年3月、翻訳者会議と全体会議は来年8月に開催される予定。
「創世記外典」は重要 岡村崇光氏
また同協会は、関連事業として8月27日、村岡崇光氏(=写真下)を講師に迎え、日基教団銀座教会(東京都中央区)で「聖書セミナー」特別講演会を開催した。「死海写本中のアラム語による創世記外典について」と題する講演に、180人の参加者が聞き入った。
「創世記外典」は死海文書の一つで、アラム語で書かれており、現在残っているものは原文の一部と考えられる。紀元前1世紀頃のものとされ、現在の創世記を当時流布していた民話等をふんだんに交えながら敷衍解釈したものと考えられている。
ヘブライ語で書かれた旧約の創世記が当時どのように理解され、正典創世記を出発点としてどのような思想の展開があったかを知ることができるものとして、村岡氏はその重要性を指摘した。
講演後の質疑にも約100人が参加し、1時間余りの時間、熱心な質問がなされ、会場は熱気にあふれた。
【別表】検討委員会の構成員
阿久戸光晴(日本基督教団)
石田学(日本ナザレン教団)
岩城聰(日本聖公会)
江本真理(日本ルーテル教団)
金丸英子(日本バプテスト連盟)
金性済(在日大韓基督教会)
喜友名朝順(沖縄バプテスト連盟)
黒木安信(ウェスレアン・ホーリネス教団)
佐藤捷雄(聖イエス会)
島しづ子(愛実の会)
鈴木浩(日本福音ルーテル教会)
寺園喜基(キリスト教学校教育同盟)
中島真実(キリスト兄弟団)
野島邦夫(日本キリスト改革派教会)
丸畑幸夫(救世軍)
三好明(日本キリスト教会)
山口里子(日本フェミニスト神学・宣教センター)
山本富二(日本バプテスト同盟)
和田幹男(カトリック司教協議会)