「強制NOで一致を」 キリスト者「祈りの会」で松浦悟郎司教 2011年12月3日
大阪府で教職員に「君が代」の起立斉唱を義務づける「教育基本条例案」への危機感が強まる中、「日の丸・君が代」強制に反対し、信教の自由を求める超教派キリスト者の会(打田茉莉代表)は11月12日、松浦悟郎氏(カトリック大阪教区司教)を招き、7回目となる「祈りの会」をカトリック麹町聖イグナチオ教会(東京都千代田区)で開催した。同会は、日本聖公会東京教区人権委員会「日の丸・君が代」強制問題に取りくむ会が事務局を務め、教派を超えたキリスト者教員らが定期的に集まり、礼拝を共にしながら情報交換を行っている。
日の丸・君が代
松浦氏は、「考え方の違いはあっても、自由に物が言える教会や社会、教育現場であってほしい」と前置きし、「信教の自由を求めて、キリスト者のつながりを」と題するメッセージを語った。
同氏が司教となった1999年は、周辺事態法、国旗国歌法が制定された歴史的転換点でもあった。同法の成立過程を振り返りながら、憲法の枠を踏み越えた強制が進められてきた要因として、戦後、国民主権に移行したものの「国体にいささかの変更なし」と首相が答弁したように、戦前からの「うつろな」国体思想を乗り越えられていないこと、権力がその影響力をより拡充していこうとする傾向を本質的に持っていることの二点を挙げた。
その上で、「憲法12条に明記されているとおり、自由は自動的に保障されるものではなく、権利を行使することで保持できる」と強調し、「『良心の自由』は、公権力による権利侵害から個人を守るための規定であり、良心とは見える行動によって表現されるもの。一人ひとりが自己の良心に従い自由を保持することで、国の暴走が止められる」と述べた。
さらに、賛否論議の前段階として、「異常な強制」に対する不安や疑問を共有することから「個人的に『日の丸・君が代』が好きな教員、信徒とも、『強制はすべきでない』との一致点で、広範な連帯が可能なはず」と訴えた。
礼拝後の懇談会では、カトリック新聞紙上で司教団に教義上の回答を求める投稿をした教員が、「裁判所が判決で教義上の問題を持ち出した以上、各教団は公に答えるべきではないか」と提起。
続いて都立学校に勤める教員が、「(東京「君が代」裁判三次訴訟の)原告50人のうち4人がクリスチャン。これは1%のクリスチャン人口に比しても大きい。すでにキリスト教への弾圧と捉えるべき段階まで来ているのではないか?」「この問題について発言すると、むしろ身内の教会員からバッシングされる。懸命に目の前の敵と戦おうとしてる時に、後ろから撃たれるのが一番辛い」と訴え、教会でも自由に議論できない空気が蔓延していることを報告した。
松浦氏は、2007年に出された「信教の自由と政教分離に関する司教団メッセージ」を紹介し、さらに具体的な問題について言及するのは難しいが、司教団内でも議論は続けたいと応答した。