江原元塾長「解雇は無効」 東奥義塾 理事会が上告断念 2012年2月25日
学校法人東奥義塾(佐々木清美理事長)の経営する東奥義塾高校(青森県弘前市)で塾長を任期途中で解職された江原有輝子氏が、塾長の地位確認と未払いの給与補償、理事長に対する損害賠償を求めた民事訴訟で、仙台高裁秋田支部(卯木誠裁判長)は1月25日、江原前塾長の地位を認めた青森地裁弘前支部の1審判決を支持し、義塾側の控訴を棄却した。
江原氏は2009年4月、海外で日本語指導をしてきた実績などを買われ、初の公募塾長として4年の任期で就任したが、翌年3月の理事会の席上、緊急動議によって解職された。江原氏は同5月、解雇権の乱用だとして提訴。佐々木理事長は解職の理由として「理事会を非難し、学校や生徒、教員を誹謗した」ことなどをあげ、「放置すれば学校自体が崩壊するとの危機感から、苦渋の決断をした」と主張していた。
判決で卯木誠裁判長は、「塾長としての見識が十分でない面はあったが、各理事、理事会は、経験不足な点を補完すべきだった」とし、「労働契約法の『やむを得ない解雇の事由』には当たらない」「任期の初年度から成果を上げ、教職員から一定の信頼も得ていた」と判断。昨年5月の1審判決に続き、解雇を無効とし、10年5月~13年3月の給与の支払いを命じた。
東奥義塾側はこれを受け、翌26日に理事会を開き、「これ以上混乱を招きたくない」として上告を断念した。判決について、「教育労働者と塾長という教育管理者を同一視している点が不本意」とした佐々木理事長は、すでに新しい塾長によって運営されていることを理由に、江原氏の復職については否定的な見解を示している。
江原氏が所属する日基教団弘前教会の教会員有志で立ち上げた「江原有輝子さんの訴訟について祈り・見守り・支える会」の杉沢徹代表世話人は、「江原さんの名誉が回復できたことは喜ばしいこと」と判決を評価し、「解職の理由が裁判所では否定されたにもかかわらず、復職させないとすれば、何か別の理由があるとしか考えられない。学校がどういう方向へ進むのか、わたしたちが口挟むことではないが、キリスト教主義の精神が失われていくのではないかと心配せざるをえない」とコメントを寄せた。
江原氏は判決を受けて、「この2年間の苦しみが報われた」と安堵する一方、「生徒の前でもう一度話したいと願って裁判を戦ってきたが、もしその道が閉ざされるとしたら、別の道が必ず開かれると信じている。たとえ1年だけでも、伝統あるキリスト教主義学校の塾長として、毎週生徒たちに聖書の言葉を語りかける恵みを与えられたことを深く感謝している。東奥義塾初代塾長である本多庸一先生の思いに立ち返って、力強く歩み続けてほしい」と、現在の心境を語った。