砂川政教分離訴訟 原告敗訴が確定 谷内栄さん「今後も闘い続ける」 2012年3月10日

 北海道砂川市が市有地を空知太神社に無償で提供していることの是非をめぐり、谷内栄さん(日本キリスト教会滝川教会員)らが起こした砂川政教分離訴訟の差し戻し上告審判決で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は2月16日、施設の撤去を求めた上告を棄却した。市側が提案した土地の有償貸与などによる違憲状態の解消案について「合理性を有する」と判断し、住民側敗訴とした札幌高裁の差し戻し控訴審判決(2010年12月)が確定した。

 市有地の提供をめぐっては、1、2審判決とも違憲と判断。最高裁大法廷(竹崎博允裁判長)は10年1月、「市が特定の宗教に特別の便益を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」との判決を下した上で、神社施設の撤去以外にも違憲状態の解消策があり得るとして同高裁に審理を差し戻していた。

 市側は、町内会館にある祠(ほこら)を同じ敷地内の鳥居付近に(約50平方㍍)移し、その一角を年間約3万5千円で貸し付け、「神社」の文字を撤去するなどの策を提案。同小法廷は、「直ちに撤去させると、平穏に行ってきた祭事などの宗教活動の継続を著しく困難にする」と指摘した。

 判決後の記者会見で原告代理人の石田明義弁護士は、「市の提案では会館敷地に最小範囲の土地を賃貸して新たな社殿の設置を認めることになり、これまでの外観以上に宗教施設が可視化される。一般市民から見て砂川市と宗教との関係が分離されていないものであり、大法廷判断の逸脱」と指摘。「特権の温存を図るものであり、宗教への特別支援になる」と批判した。

 谷内さんは、昨年11月に脳溢血で亡くなったもう一人の原告、高橋政義さんと共に闘った裁判を振り返った上で、「市は大法廷判決に沿って解決しようとしなかった。氏子総代らとどんな協議をしたのかも不明朗であり、最高裁小法廷はその点を十分に考慮していない」と訴えた。

 「違憲」との判断を引き出したことを「一定の前進を勝ち取った」と評価しながらも、「政教分離原則が徹底されない解決であり、戦争体験のない裁判官には、戦前の神社と国民の不正常な関係に思いが至らなかったのか。今後も政教分離のため闘っていく」と、決意を新たにした。

 井堀哲弁護士は、「砂川市の提案の容認する理由として、過去の経緯を特に指摘していることは関係を合理化するもので不当であり、本件の砂川市と神社との癒着関係を正しく見ていない」と指摘した。

 砂川政教分離訴訟を支える会(代表・加藤正勝=日本キリスト教会滝川教会牧師)によると、判決への抗議集会が3月12日に札幌で開かれる予定。

 全国に類似の事例が多数あることが明らかになったという意味で、本訴訟の与えた影響は大きい。弁護団は「単に有償貸与すれば解決済みという問題ではない」として、公的機関と神社との関係を見直す必要性について訴えている。

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