映画『戦火の馬』2012年3月10日

 第一次大戦下のイギリス。貧しい農家の息子アルバートは、ある日家に引き取られてきた馬のジョーイをかわいがり、農耕馬として大切に育てていた。戦況が激しくなっていき、ジョーイは英国軍の軍馬として売られてしまう。のどかな田園風景から死と隣り合わせの戦地へ向かわされるジョーイは、理由もわからず、選択の余地もないまま、国境を超えてさまざまな人に奉仕する。

 ストーリー性も舞台となるイギリス・フランスの景色もすばらしい。それと対比して、心を抉るような重苦しいシーンもたびたびある。激戦の最中、有刺鉄線で傷つき、極限状況に置かれたジョーイを助けようとする場面に、人間の良心を見る。そしてそれは、『シンドラーのリスト』や『プライベート・ライアン』など社会派ヒューマンドラマの傑作を生み出してきたスティーブン・スピルバーグ監督の祈りにも似た願いなのだろう。

原作者のマイケル・モーパーゴは、自身が出会った、第一次世界大戦の退役軍人の告白をもとに本作を書き上げたという。 

第一次世界大戦で犠牲となった馬は、100万頭とも200万頭とも言われる。戦争に生き物が動員され、重要な働き手となっていた事実を中心に描いていること自体が新鮮である。とくに反戦を謳った映画のなかでも、この種の作品は希少ではないか。

 愛馬といたいがために年齢を偽って従軍を申し出たアルバートのもいつしか、フランスの激戦地で戦っていた。

この少年の純朴で透明なまなざしと馬ジョーイの友情もまた、明日の希望を映し出す。(た)

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