「がん哲学外来 お茶の水メディカル・カフェ」開設 OCCで柏木哲夫氏が記念講演 2012年6月9日

人は死を背負って生きる

 お茶の水クリスチャンセンター(OCC)は同センター内に「がん哲学外来 お茶の水メディカル・カフェ」を5月26日、開設した。

 「がん哲学」を提唱する樋野興夫氏(順天堂大医学部教授)が、がん患者やその家族のために、患者同士、また医療者とも語り合えるサロン形式の対話の場だ。がんの悩みを心おきなく話せて、がん患者やその家族の心理的な負担を軽減したいという願いが込められている。

 樋野氏は、「大病院ほど患者同士や患者と医師が話し合える場が十分にない」と言う。OCCのあるお茶の水駅界隈には、順天堂大のほかに東京医科歯科大、さらには東京大学などの大学病院があり、毎日1万人もの患者やその家族、関係者らが行き交っているという。月に一度のペースで、「メディカル・カフェ」の場を提供する。

 OCCは同日、「メディカル・カフェ」の開設を記念し、精神科医であり金城学院学院長の柏木哲夫氏を招き講演会を行った。「生きること、寄りそうこと」と題した講演に、定員250人の会場は満席となった。

 東日本大震災後、被災地を訪れた柏木氏は、家族を亡くした人や現地での救援ボランティアにあたった人とのエピソードを織り交ぜつつ、いま仮設住宅で暮らす人々に必要なことは「寄りそう」ことと「人間力」であると言う。

 寄りそうだけではその人の背負っている苦しみや悲しみを解決することはできない。ひとりの人間がひとりの人間のもつ重荷を背負うことはできないが、「背負ってくださる方が存在しますよと、なんらかの形で紹介することはできる」と話した。

 淀川キリスト教病院名誉ホスピス長の柏木氏=写真=はこれまで約2500人の患者を看取ってきた。死は生の延長上にあるのではなく、「人は死を背負って生きている」と訴える。人は生きていたように死んでいくこと、その人の生き様が死に様につながることを2人の患者を例にあげた。

 ひとりは会社社長で、最後まで死の恐怖と戦った人だった。「入院すれば、立派な衣ははぎ落とされ、パジャマになる。会社社長という社会的な“衣”も剥げ落ち、むきだしになった魂になる。そこに平安がなければダメだ」と振り返る。「すい臓がんの痛みはモルヒネでどうにかなる。でも死の恐怖は難しい」。

 もうひとりはキリスト者であった。その人はもうあと1、2週間で「神さまのところにいけることは嬉しい」と言っていたが、肉体的な痛みは辛かった。「会社社長と違って、あまり立派な衣は着ていなかった。でも最後息を引き取るときに、その人は『行ってくるね』と。娘さんは『行ってらっしゃい』と。この人をみて、再会の希望と永遠のいのちの確信を得た」。

 柏木氏は、「むき出しになった魂に平安があったかどうか。ここが勝負の分かれ目だ」と結んだ。

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