季刊「ミニストリー」創刊3周年 読者の集いでファンと交流 〝編集者、牧師、神学者が遊べる雑誌を〟 2012年10月13日
キリスト新聞社の発行する季刊誌「ミニストリー」が創刊3周年を迎えたことを記念し、同編集部は8月から9月にかけて3回連続の読者の集いを開催した。編集スタッフが読者と顔の見える関係を築き、今後の方向性を模索しつつ、キリスト教雑誌の展望についても考える機会にしたいと願って企画されたもの。日基教団霊南坂教会(東京都港区)、日本バプテスト連盟事務所(埼玉県さいたま市)、お茶の水クリスチャンセンター(東京都千代田区)で行われ、関係者を含め延べ50人ほどが参加した。
集いには、創刊以来の愛読者を含め熱心なファンも駆けつけ、同誌との出会いから今後に期待することに至るまで、活発に意見交換が行われた。同誌の特異性を評価する声としては、「『予定調和的』なキリスト教雑誌が多い中で、初めて隅々まで読めた」「『様式美』にとらわれがちな教会の敷居を下げてくれた」「口にするのがはばかれるような問題にも、あえて覚悟して取り組むことが真の『寄り添い』になる」などが寄せられた。
なかには、毎号、自分用の他に贈呈用として複数冊購入しているという読者もおり、その地道な拡販活動にスタッフが恐縮する一幕もあった。
他方、「どこで手に入るかと聞かれ困ってしまう」「もっと読者の年齢層を下げられないか」「存在は知っていても決して買おうとしない牧師もいる」などの率直な意見も出された。
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9月14日に行われた集いでは、「キリスト教雑誌の生きる道」と題するミニシンポが行われ、同誌編集主幹の平野克己氏(日基教団代田教会牧師)と藤掛明氏(臨床心理士、「牧会ジャーナル」編集委員)がそれぞれ発題。
平野氏は同誌創刊の経緯と編集方針を改めて説明し、「若い牧師の自死が公に語られない。牧師仲間の連れ合いが相次いで病んでしまう。こうした問題を扱える雑誌が、どうしても必要でした」と述べた。編集委員として50代前後の牧師たちが各教派から集まった理由については、「私たちの世代は何も成し得てこなかった。同じテーブルにつくことすらもなかった」と振り返り、同誌で連載を執筆していた桃井和馬氏(フォトジャーナリスト)の「正義の反対は悪ではない。正義の反対は正義」という言葉を引用し、「善悪二元論を超える必要がある」と強調。「次世代の編集者、牧師、神学者たちが楽しく遊べる場所を作りたい。常に変わり続ける雑誌であってほしい」と期待を込めた。
藤掛氏は、創刊以来17年を経て、今年からウェブ版に移行した「牧会ジャーナル」も、当初は牧師室で話し合った牧師と信徒の3人で創刊されたという逸話を紹介。「これまで、キリスト教メディアさえも相互作用生を切り捨ててきた。私たちは、日常のなかで相互作用生を再発見しなくてはならない。相互作用性の反対は、予定調和であり、模範回答である」と指摘。「『ミニストリー』も、『牧会ジャーナル』も、一種の霊性運動。自分の弱さを認め、建前でなく、失敗や危機があることを前提に、その上で信仰を考えていく。そういう流れが現代の日本のキリスト教の中にできている」と語った。
今春から新たに編集委員に加わった濱野道雄氏(日本バプテスト連盟宣教研究所所長)も参加し、連載中の「教会アドミニ研究所」で取り上げたいいと考えている内容なども披露した。
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地方の熱心な読者からは、さっそく「ぜひ関東圏外でも開催してほしい」との要望が寄せられている。編集部では、いずれ北海道、東北、中国・四国、九州、沖縄など、キリスト教専門書店の少ない地域を巡回する企画も検討したいとしている。