東京YMCA「午餐会」 「治療とは何か」問う 神経内科医の赤井淳一郎氏講演 2013年3月16日
東京YMCAは2月22日、神経内科医の赤井淳一郎氏(元杏林大学教授)を迎え、第652回「午餐会」を開催した。会場の東京大学YMCA(東京・本郷)は参加者で一杯になった。
講師の赤井氏は「医療の現場から見てきたもの」と題して、20世紀後半から現在までの医療界における転換について、自身の経験を交えながら語った。いのちに直結する医療の問題に、参加者は熱心に耳を傾けた。
治療行為の多様化から、「治療とは何か」「身体・精神の健康とは何か」といった「生きること」の根本的な問いかけが今もなお続いている。研修医制度の変遷や診療報酬点数、電子カルテの功罪、CTスキャンによるレントゲン量など、その現状と問題点を率直に話した。
同氏は、現在も公・私立病院で非常勤医として、筋委縮硬化症やパーキンソン病といった神経難病、また慢性の精神神経障害の診察をしている。
「認知症」に代表される差別用語の思想についても話した。「痴呆」「白痴」という表現が排除されたことや、たとえば「脳性小児まひ」が差別用語とみなされ、「発達障害」に変更されたことなど、その障害が精神か身体かが判然としなくなった疾患もあることに言及。また「それなりに老化が進んでいる人に現代の医療行為は余計なことをやりすぎているようにも思える」とも。
時代の流れによって病名が変遷してきたことについても触れた。神経衰弱、神経症、心身症、自立神経失調症を経て「うつ」という表現が乱用され、「本当のうつの患者は迷惑していると思う」。
カトリック信徒の同氏は、京都の同志社中学高校を卒業後、慶応大医学部で学んだ。YMCAとの関係は1949年の野尻学荘参加からだという。ほぼ半世紀にわたり野尻学窓に参与してきた。