長老派教会牧師が主演 台湾映画「セデック・バレ」公開 2013年5月18日
1895年から50年間続いた台湾の日本統治。その歴史上で起きた原住民族による部族蜂起「霧社事件」を描いた台湾映画が、4月20日から公開されている。
本作は、構想に10年、企画から資金集め、撮影までさらに10年の歳月を費やし、約20億円の製作費を投じてようやく完成した前後編4時間半に及ぶ大作。第一部「太陽旗」では苦しい生活を強いられてきたセデック族が武装蜂起するまで、第二部「虹の橋」では日本の警察と日本軍による鎮圧、報復が描かれる。セデック・バレは「真の人」を意味するセデック語。
日本人キャストとして、安藤政信、木村祐一らも起用。セデック族と友好関係を築く巡査役として脇を固める。劇中には、日本人社会の中で過ごしたセデック出身の家族が両者の狭間で葛藤し、「俺たちは天皇の赤子か?セデックの子か?」と自問しながら心中する場面も。
主人公の頭目ルダオを演じたリン・チンタイは台湾基督長老教会の牧師。自身もクリスチャンだというウェイ・ダーション監督が牧師の卵は皆原住民だと聞き、神学校でキャストを探す中で偶然出会った。もちろん演技は素人だが、監督が一目見た時から主人公像にぴったりだと直感したという。また、原住民への差別を体験して自暴自棄になるなど、生い立ちが重なる部分もあり、主役には最適だった。台湾の原住民は9割がクリスチャンで、ルダオの青年時代を演じた役者もリンさんの教会の信者。
公開に合わせて来日したダーション監督は本紙の取材に対し、「台湾、中国、日本の三者は家族のような関係で、時々はけんかもするが関心はある」「多くの矛盾の中で、何を愛して何を恨むかと理論武装をするのではなく、歴史の潮流の中でぶつかり合ってできた問題だということを正しく理解することが大事ではないか」と語った。
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