７月21日の参院選を前に、「これからの国のかたちを考えよう～文明と憲法～『右』とか『左』を越えて『前』を目指そう！」と題する対話型集会が６月23日、青山学院大学（東京都渋谷区）で開催された。「友愛平和の風」と青山学院大学総合研究所の共催。ＮＨＫ「ハーバード白熱教室」で解説を務めた小林正弥氏（千葉大学教授）の進行により、護憲派・改憲派を問わず約90人の参加者が意見を交わした。

　第１部「文明と憲法――宗教的観点から」では、芳村正徳（神道神習教教主、教派神道連合会理事長）、東方敬信（青山学院大学名誉教授）の両氏が神道とキリスト教の立場からそれぞれ、「神道から改憲を考える」「文明の視点からみる平和のかたち」と題して小スピーチを行った。

　芳村氏は「天皇」について、「宗教である神道のわたしたちは、明治維新後、天皇を神だと認識していたことは一度もない」とし、「皇室の先祖の神々に対して、この国の安寧を常に祈る存在」だと強調。「国土」については、「神々がいろいろなところにいらっしゃる国だからこそ、異国の人たちに踏み込まれて荒らされてはならない、という思いが強い」との認識を示した。

　憲法については、自身の考えとして、「改憲派が主張してきたように、現憲法はアメリカから押し付けられたものであるという印象を強く感じている」と主張。「この先、憲法を自分たちで作っていくことが可能なのであれば、それは意義のあることではないか」と述べた。

　「集団的自衛権」については、「同盟国が敵国を攻撃するという場面にあっては、同盟国を守るのが筋ではないか」としつつも、その行使の範囲については議論が必要だとした。また、中国、北朝鮮、韓国の存在を挙げ、「きちんとした鎧を身にまとって、相手が侵略するという気が起きないような状況を作って、自分を守りつつ戦争には至らない」というあり方を模索する時期だと訴えた。

　東方氏は、「創り主から与えられた麗しい世界は、そのまま平和なものとして管理する」という受託精神（スチュワードシップ）を示し、「自然あるいは人間の麗しい姿が『平和』になるのではないか」と主張。イザヤ書11章の弱肉強食を克服した交流のイメージから、現実に向かって隣人愛に生きているのかを問うことが、聖書のメッセージだと語った。

　また、「ジャスト・ウォー（正しい戦争）」という理論について、「非戦闘員の攻撃を免れさせる」という点に注目し、第二次世界大戦以降、米国が行う戦争は、民間の死傷者が圧倒的に多いことから、この理論は破たんしたとの考えを示した。「憲法９条は大切。わたしたちの歴史の目標をはっきりと示してくれている。（国防軍でなく）自衛隊でよい。そして軍縮していく。それに協力しようとアメリカに呼びかけるのが日本の責任だと思う」と語った。

　その上で、日本は「おまかせ民主主義」であり、そこには責任と知性がない、と指摘。日本は唯一の被爆国として歴史的役割を担っているとし、「ジャスト・ウォー」から「平和主義」へと向かう歴史に参加することを訴えた。

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　久世望氏（日本リードオルガン協会会長）によるリードオルガン演奏をはさんで行われた第２部の白熱教室では、小林氏の司会のもと、第１部で取り上げられたテーマについて、現行憲法と自民党の「日本国憲法改正草案」を比較しながら、参加者による活発な議論が行われた。

　意見の中には、「現行憲法について、平和主義をどうやって守るかということを再考する必要がある。戦争をやるという形ではなく、平和主義を強固な形にするには、９条も含めてどのような形で変えていったらよいのかを議論していったらどうか」「改憲の立場だが自民党案に賛成ということではない。今の時代に則したもの、良いものにしていくという意味で改憲すべきだ」といった声もあり、自民党の改正草案だけでなく、別の条文案についても話し合う場を望む声が上がった。

　最後に「友愛平和の祈り」として、東方氏、芳村氏に加え、杉浦秀典（単立野方ウエスレアン・メソヂスト教会牧師）、中村行明（世界仏教徒センター会長）、渡邊宗禅（臨済宗廣済寺住職）、千勝良朗（千勝神社宮司）、本山一博（玉光神社権宮司）の各氏による連祷が行われた。

　「友愛平和」の風は、小林氏や稲垣久和氏（東京基督教大学教授）など有識者や宗教者ら20人が呼びかけ人となって今年２月に発足。友愛（愛・慈悲・仁など）と正義を中心的理念として、反核、脱原発、非戦、環境保全、貧困問題の解決などを論点として議論し、地球的ないし地域的な平和・良き環境・福祉の実現を目指す。そのために超党派的・超宗派的に協力し、意見の一致を無理に求めず、個々人の行動の自由を尊重して、友愛に基づく対話によって、運動が発展していくことを目指している。