「これからの教育を語る会」 子どもの自発性呼び覚まそう 2013年7月20日

 どのようにしたら、自発的に物事を考え、工夫し、実行していく力が子どもたちに育つのか――学校や家庭で大人がすべきことは何かを考えようと、自由学園(矢野恭弘学園長)が6月22日、「子どもの自発性を呼び覚まそう――フィンランドと日本の事例から」をテーマに「これからの教育を語る会」を開催した。会場の東京・練馬区立練馬文化センターには、親子連れなど256人が参加し、増田健太郎(九州大学大学院教授)、中村弘之(自由学園初等部部長)両氏の講演と対談に熱心に耳を傾けた。

 NPO法人「九州大学こころとそだちの相談室」専務理事・相談室長を務める臨床心理士の増田氏は、子どものいじめ問題や教師のメンタルヘルスなどについてサポートも行っている。「フィンランドの教育現場から」と題した講演では、フィンランドのオウル市で行った学校調査を紹介。2003年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)について同国の学力が高かった理由を教師20人に質問したところ、1人を除いてPISAの結果を意識していなかったという。同国の教師は自分たちの教育に自信と誇りを持っており、「目の前の子どもたちが生き生きと学ぶようにするためにはどうしたらよいのか」ということだけを考え実践しているのだと解説した。

 さらに、「少人数教育」「楽しく教えることを基盤にしている」「ディスカッションを多く取り入れている」など、同国の教育の特徴を挙げた。子どもたちの好奇心が強いことも指摘し、好奇心を育てていくことが日本の教育の課題だと述べた。

 中村氏は、「子どもに任せること」と題して自由学園初等部の実践を紹介。自発的な子どもを育てるということは、「復習を見る」「授業を作っていく」「遊びを見守る」「学校の環境を整えていく」など、周りの大人が一緒に協力していくことだと語った。

 対談「自発性のある子どもとは? 今求められる学校教育」では、司会の市岡揚一郎氏(自由学園理事長)が「ヨーロッパの教育が日本と違う一つのポイントはクリスチャニティ」と述べ、「クリスチャニティと教育」について問いかけた。

 増田氏は、「教育にとって大事なのは情熱と哲学と方法。その『哲学』が『宗教』になるのではないか」とし、宗教を教えるのではなく、宗教を通して、公とどう関わるのかを教え、個の確立が大事だと教えていくことを強調。日本では個の確立があまり考えられておらず、集団規範の中に個を合わせていくところに、ヨーロッパの教育との違いがあるのではないか、と指摘した。

 最後に市岡氏は、「今の日本の教育にかなり強い危機感を持っている」とし、「体験に裏付けられない知識の習得の度合いが大きすぎるのではないか」と提言。グローバル化に対応するとは、単に英語を勉強することではなく、日本について、同時に自分自身について、自分がどう考えているのかを国際社会で主張できることだと語った。そして、自分の頭で考え、工夫して問題に取り組んでいく人間を育てることが、日本に最も求められていることだと主張した。

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