〝つらくても実際に体験〟 元衛生兵・松本栄好氏が証言 川崎・「平和を願い記憶しよう八月十五日」 2013年9月14日

 「平和を願い記憶しよう八月十五日」と題する集会が8月16日、神奈川県川崎市のエポックなかはらで開催された(同実行委員会主催)。「元衛生兵の証言」として、元日本軍衛生兵の松本栄好氏(元日本キリスト教会牧師)が証言、元八路軍衛生兵の斎藤芳夫氏(上溝九条の会運営委員)が応答した。「戦争を語りつぐ会」による朗読劇も行われ、約50人が出席した。

 「『天皇制』が日本の諸悪の根源だ」と断言した松本氏。「わたしは戦争犯罪人の自覚がある。本当は隠れていたい」と心境を明かしつつも、「そんなことをしていたら、また同じことが始まる。どんなにつらくても、実際に経験したことを証言し続けなければならない。これがわたしの使命だと思う」と話した。

 松本氏は、衛生兵として派兵された中国の山西省盂県で、日本軍による強盗、強姦を目の当たりにした。仲間の1人がある民家に押し入ろうとした時、仕掛けてあった爆薬で爆死した。その時、「こいつも名誉の戦死で靖国神社(に祀られるの)か」と思ったという。戦没者の偉業を永遠に伝えることを目的とした靖国神社法案に当初から反対する理由となった。

 衛生兵としての仕事は、従軍慰安婦の性病検査を行い、兵隊たちを性病から守るために「注意しろよ」と呼びかけながらコンドームを配ることだった。「本当は『だめだ。そんなことをしてはいかんぞ』と言わなければいけないが、なかなかそう言えなかった」。

 敗戦を迎えた8月15日以降も武装解除されず、閻錫山の軍隊に組み込まれた。その後、山西省の日本軍は「本人たちの意向により現地除隊」とされた。

 「日本の軍隊は、自分の部下を守ることはない」と強調した松本氏。「その元凶は『天皇制』。天皇制下の日本人は、物を考えることを全然身に付けることができなかった」と主張。「自分の頭で考えて、周りをよく見て、社会をよく見て、自分で判断して、自分の信じるところを進むような人になってほしい」と訴えた。

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 斎藤氏は、尋常高等小学校を卒業後、軍需工場、少年兵、満蒙開拓という三つの進路の中から満蒙開拓を選択。実際は開拓ではなく、中国人が築いた肥沃な土地と家屋を奪うものだったという。

 敗戦後は、開拓団の依頼により八路軍に参加。東北民主聯軍遼西軍区第八野戦病院に雇用され、1949年に衛生検査技師の資格を取得した。

 八路軍では、指揮に従って行動し、民衆の物は奪ってはならないとする中国人民解放軍の軍規「三大紀律八項注意」が印象的だったと話した。引き揚げの際、国からは計2万7千円しか支給されなかったが、敗戦後13年間中国に留まったことは、「必ずしもわたしにとってはマイナスではなかった」と振り返った。

 最後に、中国残留邦人について「決して好きで残ったわけではない」とし、「あれだけいじめられた中国人が、あれだけの人たちを育て上げてくれたことは、感謝こそしなければならない」と述べた。

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 主催の「平和を願い記憶しよう八月十五日」実行委員会は、「外国人住民基本法の制定を求める神奈川キリスト者連絡会」(神奈川外キ連、登家勝也代表)などが組織している。集会は今年で13回目。

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