シンポ「ドイツ・アメリカからみるヤスクニ」 2014年9月13日
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「靖国参拝は『平和の維持』に必要か?!――世界からみるヤスクニ」を主題に、「平和の灯を! ヤスクニの闇へキャンドル行動」(同実行委員会主催)が8月9日、在日本韓国YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で開催された。延べ500人が参加した。
パウル・シュナイス氏「暴力使わずに問題解決を」
シンポジウム「ドイツ・アメリカからみるヤスクニ」では、ドイツ人牧師のパウル・シュナイス氏=写真右=が、ドイツにおける戦死者追悼について報告した。木戸衛一氏(大阪大学大学院准教授)=写真左=が通訳を務めた。
同氏はまず、ドイツ連邦議会が1997年5月に「第二次世界大戦は、侵略戦争・絶滅戦争で、ナチス=ドイツが引き起こした犯罪であった」と満場一致で決議したことを紹介。
また、「二つの世界大戦での戦死者の名前を記した銘板、反ナチ抵抗運動の男女の名前を記した銘板は、ドイツのどの町村でも見出せる」と述べ、「民主主義のドイツでは、なお多くの想起の作業をしなければならないし、極右勢力の歴史歪曲に対抗しなければならない」と強調した。
連邦国防省による栄誉記念碑(09年落成)については、「どの程度個人的追悼の欲求に適っているかどうかは、なお議論が残っている」と述べた。教会での個人的な戦死者追悼についても言及し、「教会による埋葬は、『いかなる戦争にも反対する』という理念と結び付いている。これはドイツにおいては常識だと言ってもよい」と語った。
最後に、「今の時代は、『万人が万人を叩きのめす』と言わんばかりの時代に来ているのではないか」と懸念し、「文明社会と言うが、暴力を使わずに紛争を解決することをまだ学びきっていない」と主張。ドイツでは近年、「非暴力による紛争解決」が重んじられているとし、「本当の意味で平和を欲するのであれば、暴力を使わないで問題を解決することを積み重ねていかなければならない」と訴えた。
シュナイス氏は1933年中国湖南省生まれ。日本での宣教活動を経て、84~98年、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州で牧師職。92~11年、ドイツ東亜伝道会会長を務めた。
ダグラス・ラミス氏「日米同盟には大きな矛盾」
「『同盟国』アメリカからヤスクニを見る」と題して報告した政治学者のダグラス・ラミス氏(沖縄国際大学教員)は、「日米同盟は極めて不平等」で「大きな矛盾がある」と指摘。米国は日本が「戦争できる国」になることを望んでおり、その軍事力を米国の政策の中に組み込みたいのだと述べた。
日本が「戦争できる国」になることは、1945年以前の日本に戻ることであり、それは「靖国イズム」だと主張。「日本を『戦争できる国』にすることは、9条をなくすだけでなく、日本社会を全面的に作り直すこと」であり、「戦争できる社会」は「靖国イズムの社会」だと述べた。
「『靖国イズム』のイデオロギーの中心は、前の戦争は正しかったということ」であり、このことは米国に媚びることと矛盾していると強調。太平洋戦争を正しかったとするならば、論理的に「真珠湾攻撃はすばらしい作戦だった」と言わなければならないはずであり、「例えば新聞に、『日本の総理大臣が真珠湾攻撃は悪くなかったと言った』という見出しがあれば、米国の国会・社会はどれほど爆発的に怒るだろうか」と述べた。
ラミス氏は1936年サンフランシスコ生まれ。60年、海兵隊員として沖縄県に駐留。80年、津田塾大学教授。00年に退職後、沖縄に移住し、執筆や講演活動を行っている。
シンポジウムでは他に、山田昭次(立教大学名誉教授)、内田雅敏(弁護士)の両氏も報告を行った。