カトリック・聖公会・福音ルーテル 日本で初の合同礼拝開催 第二バチカン公会議「エキュメニズム教令」50年記念 2014年12月25日

 第二バチカン公会議で採択された「エキュメニズムに関する教令」が1964年に発布されてから今年で50年。これを記念して、「いつくしみと愛のあるところ」をテーマに、日本のカトリック教会、日本聖公会、日本福音ルーテル教会の3教会による初めての合同礼拝が11月30日、カトリック東京カテドラル関口教会(東京都文京区)で行われた。各教会から教職・信徒など約630人が参集した。

 第一部のシンポジウム「『エキュメニズム教令』50年の実り」では、江藤直純氏(日本福音ルーテル教会牧師、ルーテル学院大学学長)の司会のもと、光延一郎(イエズス会司祭、上智大学神学部長)、西原廉太(日本聖公会司祭、立教大学副総長)、石居基夫(日本福音ルーテル教会牧師、日本ルーテル神学校校長)の3氏が発題した。

 「第二バチカン公会議とローマ・カトリック教会のエキュメニズム」と題して発題した光延氏は、第二バチカン公会議の根本動機は、①教会の一致(エキュメニズム)、②平和(二度と戦争をしない)、③ローマ・カトリック教会が自らを開き「世界」とかかわること――の3点であるとし、これに応じて同公会議で四つの憲章、九つの教令、三つの宣言が出されたことを紹介。教令の一つである「エキュメニズムに関する教令」は、「相手を理解するより『断罪』しようとする姿勢が先行した過去の失敗を反省し、キリストの福音にいっそう忠実な教会の形成に向かって踏み出す決意を示し」たものだと解説した。

 その上で、エキュメニズムの目標達成に向かう対話のプロセス例として、①過去の争いについての悔い改めと過ちの告白、②それぞれが受け継いできた信仰理解、すなわち神学の相違について共同で理解する、③共同的神学理解における共通点を探す、④キリスト教の根本真理から見直して、相互の立場を吟味する、⑤相違を乗り越えて、一致に向かう具体的な歩みに共同で踏み出す――という5点を示した。

 最後に個人的見解として、「日本という国は、遠いヨーロッパからキリスト教が伝わってきた、ある意味〝末端〟」であり、教派間の争いがなく、「一致協力も非常にやりやすい場ではないか」と主張した。

 「ローマ・カトリック教会と聖公会の国際対話について」と題して発題した西原氏は、「エキュメニズムに関する教令」第四項の一実践として、66年に「聖公会―ローマ・カトリック教会国際委員会」(ARCIC)が立ち上げられたことを紹介した。

 また、「聖公会―ローマ・カトリック教会・一致と宣教国際委員会」(IARCCUM、2001~2003)が設置され、07年に最終合意文書「一致と宣教における共なる成長」が公表されたことに言及し、「ARCICを具体的、日常的なレベルで形にしていくことが意識された」と解説。この合意文書で示された、両教会が共通理解に到達した主要教理9点を挙げた。

 中でも、聖餐(ユーカリスト)をめぐる両教会の合意点を示した上で、「しかしながら現実的には、両教会が現時点において、一つの聖餐を分かち合うことは実現されていない」として、考え方の違いがあることを示した。そして聖餐を分かち合うことができない最大の理由として、「聖公会の職制がローマ・カトリック教会によって公式的には現時点においても無効であるとされているからに他ならない」と述べた。

 さらに両教会は、社会倫理の諸問題、とりわけ「戦争と平和」という課題についての理解を共有しているとし、「両教会は、国際紛争を解決する手段として戦争を行使することは、イエス・キリストの教えと規範に矛盾するという認識で完全に一致している。この認識は、特定地域の紛争や、『正しい戦争』論などに対しても同様に適用される」と説明した。

 残された課題としては、教皇レオ13世の書簡『アポストリチェ・クーレ』において聖公会の職制が完全に無効であると宣言された内容が未だに撤回されていないことをあらためて指摘。また、英国国教会で女性の主教職が容認されたことが、両教会間の対話にどのような影響を与えるのか、大きな課題だと述べた。

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 「ローマ・カトリック教会とルーテル教会の対話」と題して発題した石居氏は、マルティン・ルターがヴィッテンベルクの「城教会」の扉に「95箇条の提題」を張り出した1517年10月31日が、「プロテスタント諸教会にとって忘れることのできない起源の一つであり、カトリック教会にとっては袂を分かつことになった苦々しい歴史の一つの出来事であったかもしれない」と述べた。この出来事から500年目を迎える2017年10月31日、ルーテル世界連盟(LWF)とローマ・カトリック教会が同教会で合同の礼拝を行うことは大きな出来事だとし、「エキュメニズムに関する教令」を出発点として両教会が長く対話を重ねてきた果実であると語った。

 教会間の交わりを作るためには、「一つのキリストを証しし、そのキリストに結び付いている体として、共々に働いていくことをおろそかにしない。そのことをより明らかにしていくための交わりでなければならない」と主張。その中で最も大事なことの一つは「福音の理解」だと強調した。

 LWFとローマ・カトリック教会が99年に宣言した「義認の教理に関する共同宣言」では、お互いを断罪するのではなく、「教派を超えて、一つのキリストに結び付けられた者として、お互いを承認し合い、信頼し合い、交わりを持ち、キリストの福音に仕えていく者として働いていく」ことが確認されたと解説。

 また、宗教改革500年を記念するために昨年、『争いから交わりへ』という文書が作成されたことに言及。「新しい時代に向かって宣教と奉仕を共にしていこうという決意を表している」と述べた。

 最後に、「〝見える一致〟ということであるならば、共に聖餐の交わりを持つことが望みである。そこにはまだ至っていない。しかし、洗礼を互いに承認し、キリストの呼び声に集められて宣教に送り出されていく、その礼拝であることを確認するように、この礼拝の準備をしてきた」と、今回の合同礼拝に向けて準備を進めてきたことを振り返った。

 第二部の合同礼拝では、岡田武夫(カトリック東京大司教区大司教)、大畑喜道(日本聖公会東京教区主教)、大柴譲治(日本福音ルーテル教会副議長)の3氏が司式を行い、徳善義和氏(日本福音ルーテル教会牧師、ルーテル学院大学名誉教授)が説教を行った。

 礼拝では、一つのキリストに結び合わされていることを確認するため、3教会によって一つの洗礼盤に水が注がれた。「一致の典礼」における「キリストの光の儀」では、3人の補式者が復活のろうそくから手元のろうそくに火を移し、それぞれの教会がキリストの光を輝かせながら、世の光として宣教の働きを担っていくことを確認した。また、会衆全員で平和の挨拶を交わし、「ニケア・コンスタンチノープル信条」(カトリック口語版)を朗読、主の祈り(カトリック・聖公会共通訳)を唱えた。

 来賓として、ジョセフ・チェノットゥ大司教(駐日ローマ教皇大使)、小橋孝一氏(日本キリスト教協議会議長)、石橋秀雄氏(日基教団総会議長)らも列席した。

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