災害時の宗教者の取り組み検証 仙台で「防災と宗教」シンポ 2018年4月4日
3月14~18日に仙台で行われた第3回国連防災世界会議に合わせて、パブリックフォーラムとして「防災と宗教」シンポジウムが16日、TKPガーデンシティ仙台で開催された。宗教者、学者、NGO・NPO関係者など約400人が参加した。災害時における宗教者・宗教団体の取り組みを検証し、その意義を考え、今後の災害対応における役割や可能性、課題について議論。最後に、災害の予防、被災時の対応における宗教者の取り組みについて、提言文を発表した。
提言文は、「災害では宗教・信仰を持つ人、持たざる人の区別なく、皆が共に悲しみ、共に苦しむ。その悲しみ、苦しみを前にした時、私たち宗教者は、宗教者にこそできることがあるのだと認識を深める」とし、防災のために、すべての人々と共に行動する決意を新たにすることを表明。第3回国連防災世界会議で定められるポスト2015年防災枠組の目標に、「宗教者は宗教が持つ社会的資源を活用した多様な取り組みにより貢献できると確信する」とした。
また、宗教が地域コミュニティの基盤となり、「自助」「共助」にかかわってきたとする一方で、「必ずしも地域の人々の期待に十分に応え、使命を果たすことができていない現実があることを、私たちは真摯に受け止め、自省する」とも述べた。
その上で、「防災の取り組み」「災害時の緊急対応」「復旧・復興期の役割」「行政との連携」「開かれた関係の構築」という五つの提言を示した。特に「行政との連携」の項目では、「災害時の厳しい状況下にこそ、人々にとり宗教・信仰が重要な意味を持つと考える」とし、そのために「信教の自由」は、何よりも大事にされるべきものだと主張。「行政機関の、ともすれば政教分離原則の形骸化された解釈によって軽んじられることがないように、十分に注意されるべきである」と訴えた。
最後に、「宗教者の本来の災害対応は、悲しみを背負った被災者のために祈り、人々の心に安らぎをもたらすことである、ということにほかならない」とし、東北から「臨床宗教師」の活動が生まれたことを、「非常に重要であり、今後に可能性を開くもの」と評価。「諸宗教間の対話と相互理解から生まれる叡智を結集することが、一層重要となろう」と強調した。
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シンポジウムでは、東日本大震災での宗教者による被災者支援の報告が行われ、大阪大学大学院の稲場圭信准教授が「災害における宗教者の可能性」と題して発題。同氏は、全国の自治体を対象に、宗教施設との協力関係についての調査を実施し、2千を超える宗教施設と自治体との間に災害時の協力関係があることを紹介した。
島薗進氏(宗教者災害支援連絡会代表)がコーディネーターを務めたパネルディスカッションでは、浄土宗愚鈍院の中村瑞貴住職、共同通信社長崎支局の西出勇志支局長、インドネシアのイスラーム組織・ムハマディアのディン・シャムスディーン会長、カリタスハイチのピエール・アンドレ・ドマス会長=写真右(写真提供はいずれもWCRP日本委員会)=がパネリストとして登壇。それぞれの視点から、災害における宗教者としての役割の重要性を訴えた。
シンポジウム終了後には、名取市の東日本大震災慰霊碑建立地で、宗教者による「祈りの集い」が実施された。宗教者約100人が参加し、各宗教・宗派による形式で祈りを捧げ、東日本大震災の犠牲者を追悼。被災地の早期復興を祈願した。
このシンポジウムは、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会、宗教者災害支援連絡会、宮城県宗教法人連絡協議会の3団体で構成される同シンポジウム実行委員会が主催した。