「在日韓国老人ホーム」作る会発足から30年 「故郷の家・東京」着工で記念式 2015年4月18日
在日韓国・朝鮮人の高齢者のために老人ホームを建設してきた社会福祉法人「こころの家族」(尹基理事長、大阪堺市)が3月17日、堺市、神戸市、京都市に次いで4番目となる老人ホーム「故郷の家・東京」の着工記念式を、韓国中央会館(東京都港区)で開催した。式典には、鳩山由紀夫元首相や野中広務元官房長官、柳興洙駐日大使らも参列した。
1984年、国境・民族・文化を超え、在日の高齢者が故郷に近い環境で暮らせる老人ホームを作ろうと、ソーシャルワーカーの尹氏(韓国社会福祉法人共生福祉財団会長)が朝日新聞「論壇」で呼びかけた。翌85年の2月、賛同した日本の財界、文化界、教育界、福祉業界など451人が発起人となり、「在日韓国老人ホームをつくる会」が発足し、89年には国内初の「キムチと梅干のある」特別養護老人ホーム「故郷の家」が堺市にできた。
運営の母体となっている同法人理事長の尹(日本名=田内基)氏は、朝鮮戦争下で約3千人の孤児を育て「韓国孤児の母」と言われた田内千鶴子(1912~1968)の長男。
当日はウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会牧師の峯野龍弘氏が開会の祈りを担当。その後、これまでの歩みを日韓の関係者が振り返った。
野中氏は、朝鮮半島から連行された人々が過酷な労働を強いられている現場を目の当たりにした体験にも触れながら、「醜い戦争を知る世代として、戦争をしてはならないということを次の世代に引き継ぎ、日本が北東アジアの皆様に犠牲と困難を押し付けた償いを、少しでも果たすことができればとの思いを持っている」とあいさつ。
2012年より「在日韓国老人ホームを作る会」の会長を務める阿部志郎氏=写真=は、30年前に尹氏夫妻が描いた夢が東京でも実現できることを喜び、「愛し、愛され、愛する共同体を作りたい」「私たち日本が犯した罪の贖罪のために、許しを請う印として『故郷の家』を建てるのです」と述べた。
関東初の「故郷の家」として、江東区塩浜に建設される「故郷の家・東京」は、2016年秋のオープンの予定。