西欧的理解からの脱出目指す 京大院生ら「東方キリスト教圏研究会」 2015年5月23日

 京都大学文学研究科の大学院生による「東方キリスト教圏研究会」が4月18日、京都大学(京都市左京区)で開催された。早川尚志(西南アジア史学)=写真=と福田耕佑(20世紀学)の両氏が呼びかけ、20代の大学院生を中心に約20人が参加。

 冒頭、早川氏により「東方正教圏とは」と題して、趣旨説明がなされた。一般に日本におけるキリスト教理解は、西欧的なものに限られているが、西欧から東アジアに至る広大な地域に広く分布し、教義、文化、歴史においてさまざまな多様性を持つ東方キリスト教圏の思想文化を多角的・包括的に理解しようとする試みがこの研究会であるとした。

 研究発表は二つ行われた。宮川創氏(日本学術振興会特別研究員)が 「コプト語サイード方言における翻訳文学と非翻訳文学との間の言語使用の差」として、コプト語とその文学に関する基礎知識を確認した後、コプト語冠詞の種類と歴史を説明。その後、コーパス(言語学において自然言語の文章を構造化し、大規模集積して研究する方法)を用いて、言語学上、非常に珍しいコプト語キリスト教文献における二重冠詞の、翻訳文学と非翻訳文学とでの分布の差異を指摘した。

 続いて福田氏が「ニコス=カザンザキスの形而上学におけるキリストの位置付けとビザンツ神学」と題して発表した。現代ギリシア文学に欠かせないカザンザキスのキリスト教理解を3点から解説した。

 まず、彼の作品『禁欲』を取り扱い主要概念「叫び」について指摘。次に「叫び」に従い人間の生の快楽も苦痛も両方とも受け入れた英雄という、カザンザキス文学のキリスト論を解説。最後に、彼の前提であり、彼を破門したギリシア・ビザンツ神学の観点から、その解釈の可能性を示唆した。

 日本では広く知られていない東方キリスト教世界だが、少しずつ周知されている。次回は5月30日。問合せは研究会事務局(eoas.office@gmail.com)まで。公式サイトhttp://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~hayakawa/eoas/index.html

 

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