アイルランドで同性婚合法化 バチカン機関紙は「敗北」と論評 2015年6月13日
同性同士の婚姻を認める同性婚は米国(一部の州)、フランス、カナダ、イギリスなど19カ国、夫婦に準じる権利を認めるパートナーシップはドイツ、イタリア、オーストラリア(一部の州)など25カ国・地域で導入されている。
キリスト教会は歴史的にも、同性婚や離婚には否定的だった。とりわけカトリック教会では、聖職者の結婚が原則として認められておらず、女性が叙階(神父に任職)されることもない。他方、伝統を重んじる保守的なキリスト教国でも変化が生まれ始めている。
国民の約85%がカトリック信徒で、同性愛(1993年まで)や離婚(96年まで)が違法とされていたアイルランドでは5月22日、同性婚を認める憲法改正について国民投票が行われ、賛成票(62・07%)が反対票(37・93%)を大幅に上回る結果となった。
その背景には、欧米での教会による影響力の低下があるとの見方が有力だ。英BBCは、「内政でかつて支配的な立場にあったカトリック教会の役割の大幅な減退」と報じた。ローマ教皇庁(バチカン)の日刊紙オッセルバトーレ・ロマーノは25日、「教会への挑戦」と題した記事で、若者の高い投票率を「敗因」に挙げ、「社会と教会との間に距離がある」とし、今回の投票結果はカトリック教会にとって「敗北だ」と認めた。
同性愛者の権利は「結婚の定義を変えることなく尊重されるべき」と反対を呼びかけていたダブリン大司教区のディアミド・マーティン大司教は、公共放送の取材に対し「今回の結果が若い人々の考え方を示すものならば、カトリック教会は大きな課題に直面していることになる」と語り、「教会は現実に向き合う必要がある」と苦言を呈した。
カトリック教会の内部でも、柔軟な対応を求める改革派と、教義に厳格な保守派とが拮抗しているのが実状。教皇フランシスコは、2013年の公文書で「結婚とは男女がしっかり結ばれること。それが家族の基盤」と従来の考え方を堅持した一方、「慈悲深い対応が必要」「神を求める善意の同性愛者を裁くことはできない」とも述べている。
翌14年10月には、「世界代表司教会議」(シノドス)の臨時総会で、「家族」に関する報告書に「同性愛者らはカトリック社会に恩恵をもたらす」との表現が盛り込まれたものの、教会内からの強い反対で削除を余儀なくされた。