教皇がサラエボを司牧訪問 民族の融和と宗教間の対話訴え 2015年6月20日
教皇フランシスコは6月6日、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボを1日の日程で司牧訪問した。イスラム教徒とセルビア系、クロアチア系の3勢力による激しい内戦の終結から今年で20年、教皇は、民族の融和と宗教間の対話を促し、平和と共存を訴えた。
6日朝7時、教皇はヘリコプターでバチカン(ローマ教皇庁)を出発、サラエボ空港に9時到着した。大統領官邸での歓迎式の後、大統領評議会を訪問、ムラデン・イヴァニッチ現議長はじめ評議会メンバーとの会談、続いて、アシム・フェルハトヴィッチ・ハセ競技場で市民参加のミサを司式した。
教皇は、世界各地で紛争が続く状況は「第3次世界大戦のようだ」と憂慮、「戦争の空気が広がり、それをあおる者もいる」と不正な武器の取引などを批判した。1990年代の民族紛争で多数が犠牲となり苦しみを味わった国民に対し、多様性を尊重し和解の努力を続けるよう呼び掛けた。
午後、教皇は、先の紛争による破壊から修復された司教座聖堂で、司祭・修道者・神学生ら教会関係者と会見。司祭、修道者、修道女の代表3人が、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の信仰の体験を語ると、教皇は用意した原稿を用いずに参加者に語りかけた。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、これらの体験は国民の記憶であり、その歴史を忘れてはならないと述べ、それは復讐するためではなく、平和を作るため、彼らが愛したようにわたしたちもまた愛するためであると語った。
教皇は、人々が体験を語る中で「赦し」という言葉を繰り返していることを指摘。「主に自らを捧げる人々が赦しを知らないならば、その人の奉献生活に何の意味があるだろうか」と問いながら、「口喧嘩した友人を赦すのはたやすいが、自分を拷問・蹂躙し、殺そうとした人々を赦すことは難しい。しかし彼らはそれを赦すことができ、皆にも赦しを説いている」と、赦しの難しさと大切さに触れた。
教皇のサラエボ訪問は、これまでヨハネ・パウロ2世の2回の訪問がある。ヨハネ・パウロ2世はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争直後の1997年、サラエボで、平和と和解を訴えた。2003年には、福者イヴァン・メルツ(1896~1928)列福式のため同地を訪れている。(CJC)