結果に執着せず今やるべきことを 日本臨床パストラルケア研究会に河野義行氏 2015年7月18日
臨床パストラル教育研究センター(W・キッペス理事長)が主催する第18回日本臨床パストラルケア研究会が6月20~21日、日本教育会館(東京都千代田区)で開催された。テーマは「ゆるし」。松本サリン事件の被害者である河野義行氏=写真=が、「今を生きる喜び」と題して初日に特別講演を行った。
松本サリン事件から21年。河野氏にとって「今を生きる」とは、「今やるべきことを行って、結果に執着しない」ということ。「結果はあくまでも過去のもの。いくら努力しても結果は変えられない。だったらそれに執着する必要はない」
同時に、「将来の不安も考える必要はない」と述べた。「いのちの保証はない。5年も10年も先の心配をなぜしなければいけないのか」。大事なことは、今やるべきことを行い、自分がどのような生き方をしたいか、という「思い」を決めること。「思いがあるとそのような結果になっていく、というのがわたしの経験」と語った。
1994年6月27日、長野県松本市でオウム真理教教徒により神経ガスのサリンが散布された。被害を受け、家族と共に病院に運ばれた河野氏は、警察とマスコミから容疑者として扱われ、世間からは「殺人鬼」と呼ばれた。「マスコミがそのような虚像を作り上げた。しかしわたしはマスコミを恨んでいないし、取材にも対応している。あるいは事件を起こしたオウム真理教の人たちに対して、実行犯の人も含めて普通に接している」。憎むことも恨むこともしないのは、エネルギーが要るだけで得るものが何もなく、割に合わないからだと言う。
「ゆるす」ということについては、「本当に悪いと思って頭を下げることが『ゆるしを請う』ということならば、主導権は相手にある」とし、関わっていく必要はないと主張。「相手が本当に悪いと思ったら反省すればよい」というスタンスで実行犯の人たちとも接してきた。「そうすると楽な生き方になる。楽な生き方、楽しい生き方、それが生きるためにとても大事なことだと思う」
初日には他に、谷山洋三氏(東北大学大学院文学研究科准教授)とキッペス氏がそれぞれ教育講演を行った。