11年ぶりに日韓NCC共同協議会 NCC議長・小橋孝一氏報告 2015年11月14日
日本キリスト教協議会(NCCJ)と韓国キリスト教教会協議会(NCCK)は10月14~17日、「東北アジアの平和――日本教会と韓国教会の役割」を主題に、第9回日韓NCC共同協議会をソウルの韓国キリスト教会館で開催した=写真(撮影=飛田雄一)。約100人が参加した。
同協議会は、2004年の東京での開催以来、11年ぶり。日本からは、NCC議長の小橋孝一氏、NCC副議長の矢萩新一氏、日基教団総会議長の石橋秀雄氏のほか、「9条世界宗教者会議」の野口陽一氏(庭野平和財団理事)を含む14人が出席した。
協議会の内容を小橋氏が報告する。
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今回の協議会は日韓NCCの歴史的関係である東山荘プロセス、韓国民主化運動、日本軍「慰安婦」問題、東日本大震災の連帯、また、URM(都市農村宣教委員会)、女性委員会、青年委員会の各委員会が継続的に開催してきた協議会などを踏まえ、今日の課題を共に担う絆を強めるために、敗戦70年の年に開催することとなった。
協議会は開会礼拝に続き、イ・キホ氏(韓神大学)の基調講演が「東北アジアの平和、地域共存と繁栄構想――日本と韓国の役目」と題してなされた。当該講演は「記憶との闘い」の重要性を再認識させるものであった。
記憶することを通して、私たちは過去を省みて現在を再構成し、未来の希望を担う次世代を生みだしていくこと。市民の連帯なしには国を超えた東北アジアの真の平和構築は不可能であることも共有した。
続いて、「神のことばに聞き従い、あらゆる人々と共に」、「東北アジア地域の平和構築のための日本と韓国の教会の役割」、「日韓教会 東北アジア平和運動に対する評価と課題」、「URMの視座から」、「NCCJ女性委員会活動の経緯と展望」、「日韓キリスト青年交流――出会いの場」と題して提案がなされた。これらの提案を受けて、正義、平和、女性・青年の3分科会で各論を協議した。
最終日に声明が発表された。10項目の共通課題が声明で確認され、付帯文書で8項目の共同実践課題が決定され、今後の連帯の方向性が具体的に示された。各内容は、次の通り。
声明
1.平和憲法9条の精神を守るために連帯する。
2.韓半島の分断の痛みを癒し、平和と和解統一のために堅固な連帯を継続する。
3.日韓両国にある歴史教科書問題に関し、正しい歴史認識継承のために協働する。
4.貧富の格差拡大を克服するために共に祈り取り組んでいく。
5.日本でのヘイトスピーチ等に対し人種差別を撤廃するための両教会間のネットワークを構築して協力する。
6.原子力発電所の段階的な閉鎖をただちに決定し、再生可能エネルギーの開発を通して世界の保全を日韓両政府に要請する。
7.6者会談当事国は、自ら非核し、全世界の非核化の先駆けとなる事を要請する。
8.いわゆる日本軍「慰安婦」問題に対して日本政府に真の謝罪と賠償を継続して求める。また、女性と子どもの人権を守るために連帯する。
9.両国青年の出会いを継続し、平和のためのリーダーシッププログラムを積極的に支援する。
10.地域の教会共同体の交流やエキュメニズムを強め福音宣教の課題を共に担う。
付帯文書=共同実践課題
1.第5回9条世界宗教者会議の早急な開催のため、準備会を組織する。
2.東山荘プロセス精神を継承し、8・15直前主日を「韓半島平和統一共同祈祷主日」として督励する。
3.日本軍「慰安婦」の真実を明らかにし、韓国歴史教科書国定化に共に反対する。
4.青年交流プログラムを共に支援する。
5.第3回「マイノリティー問題と宣教」国際会議に参加し、差別に対して共同する。
6.原子力行政に対する姿勢として生態系宣教に邁進する。
7.被爆者に対する政府の責任を明らかにする。
8.日韓協議会を定期的に開催するため、また、実践課題の速やかな実践のため両NCC指導者が会合する。
今協議会開催前日、ソウル日本大使館前での第1200回定期水曜デモに筆者と矢萩氏が参加し、筆者が謝罪と連帯の発言をした。当日は500人を超える参加者があり、日本から訪問した男性の初めてのスピーチとして注目された。
また、日基教団の石橋議長も当該協議会に初めて参加し、日基教団が主催する国際青年フォーラムの案内をしたところ、韓国側から参加の希望が出された。今後、これらの新しい交流が開始される可能性がある。憲法9条に関する関心の高さが際立ち、9条世界宗教者会議の開催が求められた。(こばし・こういち)