法学者とSEALDs 学生が議論 平和憲法と安保法テーマに国際基督教大シンポ 2015年12月25日

 国際基督教大学平和研究所(東京都三鷹市、千葉眞所長)は12月5日、シンポジウム「平和憲法と安保法の行方――SEALDsとともに」を同大学で開催した。約180人が参加した。

 まず、憲法学を専門とする樋口陽一氏(東京大学名誉教授、「立憲デモクラシーの会」共同代表)が「戦後憲法史のなかの〈いま〉――そのパラドックスを解くことの意味」と題して、また、国際法を専門とする最上敏樹氏(早稲田大学教授、国際基督教大学平和研究所顧問)が「2015年武力行使法――国際立憲主義の視点から」と題して基調講演を行った。

 続いて、稲正樹氏(国際基督教大学平和研究所所員)と、同大学の学生で、「自由と民主主義のための学生緊急行動」(SEALDs)のメンバーである元山仁士郎、小林叶の2氏も加わり、千葉氏の司会のもと、パネルディスカッションが行われた。

 稲氏は、9条があることによって日本の立憲主義が基礎付けられているという樋口氏の発言を取り上げ、「平和な憲法秩序が壊されようとしている状態の中で、平和と人権を結び付けていくのが課題だとあらためて感じた」とコメント。最上氏の講演から学んだこととしては、「自衛権万能主義の落とし穴に落ち込んでしまっている」ことを挙げ、「それは集団安全保障も同様であって、そのような道にあってはならないという力強いメッセージだった。紛争を平和的に解決するという現代の国際法の主流の考え方を今一度確認して、それを国内において実践していくことが国際立憲主義の基本にある考え方だと受け取った」とコメントした。

 元山氏は、今夏の国会前でのデモを振り返り、「憲法が自分たち一人ひとりの言葉となって路上で語られ始めた」と、その成果を強調。小林氏は、パリでのテロに関連して、「軍事力だけで本当に平和を築くことができるのか」と問い掛けた。

 この問いに対し樋口氏は、今回のテロが国内法上の犯罪であるにもかかわらず、オランド大統領が「戦争」という言葉を使ったことを非難。「イスラム国」を戦争の相手である「国」として承認することになると述べた。

 最上氏も、国家ではないはずの「イスラム国」に対して戦争を行うことは、国際法上不可能だと述べ、刑法に従って裁くべきだと主張した。9・11の時の米国も、今回のフランスも、自衛権を行使していることを指摘し、「このような実績が積み重ねられると、国家ではないものに対しても自衛権が行使できる、国際法上許されるという話になってくる」と危惧。「集団的自衛権は、現代世界において、国際立憲主義の観点からは認められない。そういうものに自分の国も軽々と乗ってほしくない」と語った。

 安保法廃止に向けた今後の取り組みについて千葉氏から質問が出されると、稲氏は、請願権と選挙権の行使、共産党と民主党の選挙協力、憲法研究者や弁護士による落選運動を挙げた。

 元山氏は、SEALDsが来年7月の参議院選挙をもって解散することに言及した上で、野党側の連絡会に参加し、安保法制反対の受け皿を作ることで一致するよう要請したことを紹介した。

 小林氏は、「自分1人で孤独に思考して判断して行動する。それが今一番大事なことだと思う」とし、「民主主義も結局は一人ひとりが孤独に思考し判断しなければ絶対に達成できないと思う。団体に所属する必要はまったくない。まだ思考することを開始していない人たちに向けてどのように行動を喚起していくことができるかが大事」と訴えた。

 これを受けて千葉氏は、「SEALDsが教えてくれたことはいくつもある。その一つは自分の経験と自分の考えで語るということ」「SEALDsの議論は心あふれる議論で、共鳴した」と述べ、非暴力で一貫していることを評価。「安保関連法に反対するママの会」なども例に、「参加デモクラシーの模範的な行為を示してくれた」と述べ、こうした活動をつなげていく必要性を訴えた。

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