『キリスト教年鑑』2016年版 意識の変化浮き彫りに 20年前との比較検討から 2016年2月13日
『キリスト教年鑑』(キリスト新聞社)編集委員会は2015年9~10月にかけて、同年鑑の国内人名欄に登録された教職・信徒を対象に「戦後70年・教会アンケート」を実施した。2015年版の国内人名欄に掲載されている8041件にアンケートを送付し、計2560件(教職2133、信徒427)の回答を得た(回答率31.8%)。アンケートは戦後50年にあたる1995年にも実施(結果は96年版の年鑑に掲載)しており、結果を比較検討するために、今回のアンケート項目は基本的に95年の内容に準じ(一部、「阪神・淡路大震災」を「東日本大震災」に変更)、今日的課題に関する設問を新たに加えた。集計結果について、郡山千里氏(「世界キリスト教情報」主宰)の分析を2週にわたって収録する。なお、全文は『キリスト教年鑑』2016年版に掲載。
回答者の年代構成を見ると、1995年には60代(構成比率29.3%)と50 代(同27.9%)で過半数を占めていたのが、2015年には80代(同18%)と70代(同28.5%)で過半数を割り込んでいる。回答者がすべて同一とは想定できないが、教職の高齢化をそこに読み取れる。
「教会で力を入れている事」を問う設問に対し、選択肢として「礼拝」「賛美」「祈り」「聖書研究」「伝道」「神学」「会堂建築」「献金」と並ぶ。「礼拝」「賛美」「祈り」「聖書研究」「伝道」では、「礼拝」に力を入れているのが教職・信徒とも、今回前回双方で3割内外を占め1位なのは当然として、次の4項目いずれも1割弱から上の回答があったのに、それ以外は1割に届いていない。これを健全な教会の姿と見るか、意見の分かれるところだろう。
「教派間の交流・交わりについてどう思うか」の問いには、「深めるべき」が教職78.2%(前回74.1%)、信徒80.6%(前回88.2%)と圧倒的だが、信徒が前回より7.6ポイント減少しているのが目立つ。信徒にとって「必要はない」「他教派に関心がない」と思うことを、「純粋な信仰の持ち主が増えた」と喜ぶのは教職だとしたら、自己の認識と信徒への期待とにズレがあっても当然。
「これからの教会に最も必要とされているもの」について、教職は「礼拝」18.2%(前回16.8%)、伝道14.8%(前回14.7%)、「祈り」14.4%(前回14.5%)に絞られ、「聖書研究」8.1%(前回9%)が次いでいる。
信徒の意識はこの20年間で激変しており、「礼拝」17.3%(前回0.9%)、「伝道」14.8%(前回26.1%)、「祈り」13.9%(前回0.7%)、「社会実践」10.6%(前回2.1%)、「エキュメニカル活動」9.3%(前回18.8%)の上位は当然のように見えるが、前回は、「伝道」「エキュメニカル活動」「聖書研究」(今回7.6%、前回15.1%)の順で、「聖書研究」を最も必要とされているものという認識が半減していることは考えさせられる。
「キリスト教界が今後も考えていくべき社会問題は何だと思うか」との問いには、「その他」を含め15項目が挙げられているが、関心は今回・前回共に教職は「世界平和」「子どもの教育・いじめ問題」「人権・差別の問題」「高齢化社会」に集中している。ただ教職は上述の順序だが、信徒は「世界平和」「人権・差別の問題」「子どもの教育・いじめ問題」「高齢化社会」の順。
教職は20年前には「異端的宗教への対応」を挙げた回答が11.9%あったが、今回は4.2%に減少したことが注目される。
「日本は先の大戦で関わったアジアの国々に、十分な償いをしてきたと思うか」には、教職・信徒とも「まだ十分ではない」と前回今回双方で表明しているが、比率を見ると、教職は75.4%から70.7%に減少、信徒は82.7%から68.4%に急減している。教会での議論の変化に注目したい。