「聖戦と十字軍」テーマにシンポ 京都ユダヤ思想学会で一神教研究者ら 2016年7月16日

 京都ユダヤ思想学会(勝村弘也会長)は6月19日、第9回学術大会を同志社大学(京都市上京区)で開いた。午前中の個人研究発表に続き午後は公開シンポジウム「聖戦と十字軍――現代・歴史・一神教が交差するところ」が行われ約100人が参加した=写真。

 基調講演で山内進氏(一橋大学名誉教授)は、歴史的「十字軍」の特徴を「十字のしるし」「教皇主導」「参加者への罪の赦免」「参加者の家族への特権付与」と要約。11~12世紀の教皇革命(聖職叙任権闘争)を経たウルバヌス二世「クレルモン演説」による十字軍は、典型的「聖戦」であり、後にそのイメージが拡張・援用されたこと、異教徒であるから攻撃対象とするのは不当と訴えた「正当戦争論」から15世紀のコンスタンツ論争を解説し、歴史的実態と思想としての「十字軍」を提示した。

 続けて各専門分野からシンポジストが応答。勝村氏(神戸松蔭女子学院大学名誉教授)は、旧約聖書における「聖戦」で特に神自身が戦った事例を紹介。「聖戦」に関連してマルティン・ノートのアンフィクチオニー仮説、フォンラートの議論、それらに対する学的批判を解説した。

 小原克博氏(同志社大学神学部教授)は異教徒を浄化する「十字軍」概念が、ピューリタニズム、現代米国キリスト教、欧州のイスラム排撃運動に通底すると指摘。「聖戦」が疑似宗教化した国家によってなされた歴史に注意を促した。

 中田考氏(同志社大学客員教授)はイスラム学の視座から、西欧とムスリムの間にあるいびつな「十字軍パラダイム」に言及。衝突よりも平和的共存を選んだ歴史を紹介し、現代イスラム世界の正統カリフ空位による混乱、聖戦理解を解説した。

 合田正人氏(明治大学教授)は近代ユダヤ哲学の観点から、クロード・レヴィ=ストロース著『悲しき熱帯』の「イスラム化」についての1節を紹介。またダニエル・シボニー『三つの一神教』からレヴィナスの正戦論を論じ、ユダヤ・キリスト・イスラムの関係を示唆的に考察した。

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