「100年経ってもなお伝わる魂」 三浦綾子原作「母」公開で出演者ら登壇 2017年3月4日
山田火砂子監督による三浦綾子原作の映画『母――小林多喜二の母の物語』(現代ぷろだくしょん制作)が2月10日、江戸東京博物館ホール(東京都墨田区)で公開初日を迎え、上映後には多喜二役の塩谷瞬さん、多喜二の弟・三吾役の水石亜飛夢さん、宮本百合子役の露のききょうさんらが登壇してあいさつした。
原作は『蟹工船』をはじめ数々のプロレタリア文学を手がけ、治安維持法下の逮捕、拷問により29歳の若さで殺された小林多喜二と、その母セキの生涯を描いた三浦文学の集大成。映画では貧しい家庭に生まれたセキが15歳で小林家に嫁ぎ、深い愛情と信頼によって三男三女を育て、多喜二を失った後は、イエスの母マリアと自身の苦しみを重ね合わせ、信仰を持つに至るまでが描かれる。
原作を読み、覚悟を決めて演じたという塩谷さんは、「小林多喜二の役を演じ、100年経ってもなお、今に伝わる魂が色あせることなく届いてきた」と振り返った。
小林家の隣人を演じた舞台女優の神田さち子さんは、山田監督の強い希望により、「ここだけの話、(出征した子どもが戦死して)『靖国の母』と言われるよりも、子どもを生きて返してほしいと皆願っている」とのセリフが急きょ加えられたというエピソードを明かした。
山田監督は、「世の中の雲行きがおかしくなってきたので、13歳まで戦争を体験した身として、もう一度、平和映画に挑戦していこうと思った」と述べ、次回作への意欲ものぞかせた。