社会の刷新もたらす反知性主義 森本あんり氏が米大統領選振り返る 2017年3月18日

 「アメリカ大統領選挙をふりかえって――反知性主義と民主主義の行方」と題し、国際基督教大学副学長の森本あんり氏が2月20日、東京YMCA午餐会で講演した=写真。会場は東京大学YMCA(東京都文京区)。約70人が参加した。

 『アメリカ・キリスト教史』(新教出版社)、『反知性主義』(新潮選書)などの著者である同氏。まず過去の米大統領選を振り返り、2000年に知性派のアル・ゴア氏が敗れ、ジョージ・W・ブッシュ氏が当選した例を挙げ、伝統的に米大統領は知性派が少ないと指摘。ドナルド・トランプ氏も「反知性主義」と表現されるが、そもそも反知性主義とは何かを解説した。

 17世紀、マサチューセッツにオランダ系移民たちが定住すると、彼らはまず牧師要請を主眼とした大学を建てた。牧師は皆大卒で、主日礼拝は牧師説教と講演が長時間続くスタイルだったという。そのような「知性主義」に人々が反発し始めると、分かりやすい言葉で説教を語る伝道者たちが登場、これが反知性主義の出発点だと同氏。

 反知性主義は、富の分配の不平等化による格差など、既存の体制に対するアンチテーゼになると解説。反知性主義とは、知性に反発しているのではなく知性が固定の権力と結びつくことに反発しているとし、既存の体制を壊す力を持ち、社会の刷新をもたらすと主張した。

 同氏は米国キリスト教では、この世における成功が神の祝福であると理解されていると指摘。トランプ氏に対しても米国民は「成功しているので、我々には分からないが神は彼のよいところを見出しているのだろう」と考えていると述べた。

 また、民主主義について「多数決=民主主義」ではなく、多数決を否定しなければならない場合もあると指摘。英国のEU離脱問題を見ても、熟考の末ではない国民投票に結果を委ねるのは民主主義において危険だと訴えた。

 同氏は、米国は過去に遡っても自分たちの統一の根拠がなく、平和、平等、自由などの理念を掲げ将来に求めるしかなかったとし、今後雇用、経済、国境などの理念で「アメリカファースト」になれるのか、これからの数年が証しするだろうと締めくくった。

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