神戸国際支縁機構 海外の被災孤児ら支援 故人の遺志継ぎ「カヨ子基金」創設 2017年4月1日
被災地へのボランティアなどを中心に活動してきた神戸国際支縁機構(理事長・岩村義雄=神戸国際キリスト教会牧師=写真後列)はこのほど、ネパール、バヌアツ、ベトナムなど、海外の被災地で親や住居を失った子どもたちを継続的に支援するため、「カヨ子基金」(英語名「Kayoko Fund」)を創設した。同基金は、昨年10月にがんのため逝去した岩村カヨ子さん(岩村義雄さんの妻=写真下、中央、2015年撮影)の名を冠したもので、毎月1口3千円ずつの自動引き落としを通じ、孤児らが学校に通い、基本的な生活をして、大人になるまでを支援するという仕組み。
ネパールでの支援通じて決意
2015年の大震災で甚大な被害を受けたネパールでは、孤児らがライフラインのない劣悪な仮設住宅での生活を強いられている。狭い部屋に大家族が住み、夏は暑く、雨期は雨音のため眠れない状態だという。
同機構は、計3カ所で「チルドレン・ホーム」の建設を支援しており、これまでもクラウドファンディングで集めた100万円を建造費として寄付してきた。いずれも、土地は現地からの提供を受け、20~30人が共同生活をしながら学校に通う。運営資金、食事などは地元のボランティア、キリスト教会、ヒンドゥー教の寺院などによってまかなわれる。この5月から入居が可能になる予定。今後、自然災害の状況に応じて、パキスタン、シリア、アフリカ諸国、ハイチなども対象に検討している。
今年1月にも現地を訪れた岩村義雄さんは、貧しい子どもたちが学校に通い、教育を受けられるよう、基金を設けて、日本人の里親を募ることを決意した。「カヨ子基金」は海外の孤児が大学を卒業するまでの教育費、通学、生活諸費用の実費を親代わりに負担するもので、機構の運営費や人件費には充当しない。
同基金の細則は以下。
(1)国際的に、ハリケーン、台風、サイクロン、津波、地震などにより、親、住居、財を失った弱者の現地に視察する。施設を建造する(土地代金、施設運営費を除く)。
(2)兵庫県知事、神戸市長などの親書を携えて、被災地の首長を見舞う。
(3)孤児たちのために、大学を卒業するまでの教育費、生活費、学習に必要な支援をする。
(4)戦争、紛争、ジェノサイドに苦悩する地域においても里親として支縁する。
(5)「カヨ子基金」は神戸国際支縁機構の国内の事業、運営費、人件費の補充のために用いない。
自動引き落としのための手続きについては、同機構サイト(http://bit.ly/2nmxsE9)を参照。基金の創設に際して以下、四つの口座を開設した。詳しくは同機構(℡078・782・9697)まで。
・郵便振替14340・96549731「カヨ子基金」
・みなと銀行明舞支店(175)普通175・3921374「カヨ子基金」
・三菱東京UFJ銀行三宮支店(462)普通462・3422530「Kayoko Fund」
・三井住友銀行神戸営業部(500)普通500・9821847「カヨ子基金」
仏教の家庭で育ったカヨ子さんは、結婚前から社会的弱者に特別の重荷を負っており、義雄さんの働きも二人三脚で支えてきた。とりわけ東日本大震災を契機に、「自然と共生できなければ日本の将来はない」とよく語っていたという。
同機構事務局長の本田寿久さんは、生前のカヨ子さんについて「多くの人々に自分の身を粉にして仕える生き様こそ『ボランティア道の母』と言えます。わたしたち夫婦、息子たちだけでなく、悩んでいる人にとって、かけがえのない存在でした」と振り返る。
「家族間の不和、反抗期の子どもを持つ親、宗教の不信感などについて、電話だけでなく、何時間でも親身になって聴かれていました」「食事や入浴、プライベートのゆったりした時間はないづくめ……。とことん相手の側に感情移入されていました。口は固く、個々の秘密は決してだれにも漏らさないことでも信頼されていました。それはすごいストレスであったとわたしたち夫婦でよく話題なったものです。炎天下で道路工事をしている労働者を見ると、見知らぬ人たちにでさえ、冷たい飲物を持っていく姿は天使のようでした」
ボランティア教わった〝祈りの人〟
東日本大震災発生直後の2011年3月、神戸国際支縁機構のボランティア活動に誘われ、東北に赴いたという村上裕隆さんは、カヨ子さんの思い出をこう綴る。
「いつも『あなたのような人はいない』 と励ましていただいたことで、これまでボランティアを続けられたと思っています」「祈りの人でもありました。夫(義雄さん)の健康、事故がないように、たゆまず祈っておられる姿がすぐに目に浮かびます。学生たちや僕に頭を下げて、『主人をよろしくお願いします』が口癖でした」
カヨ子さんは、当時ひきこもりだった村上さんを実の息子のようにかわいがった。2016年6月以降、自宅で闘病していた時も周囲を気遣い、10月1日に「教会と地域福祉」フォーラム21の関西シンポジウム(キリスト新聞社主催)で発言したことを聞き、涙を流して喜んだという。「人生の中で僕のために涙を流して喜んでくれる人がこれからどれだけいるでしょうか」と村上さん。
「ボランティアに目を開かせてくださった『母』に恥じぬように、苦悩する人々に仕えていきます」との決意は固い。