「改正組織犯罪処罰法」施行 カトリック正平協が声明 2017年8月1日

 日本カトリック正義と平和協議会(勝谷太治会長)は7月11日、「改正組織犯罪処罰法」施行にともない声明を発表した。

(以下声明文)

日本カトリック正義と平和協議会会長
勝谷太治司教

いわゆる「共謀罪」を盛り込む「改正組織犯罪処罰法」施行に関する声明

 参議院法務委員会の採決省略という異例の手続きと参議院本会議での採決により、6月15日に成立した、いわゆる「共謀罪」を盛り込む「改訂組織犯罪処罰法」が、本日、2017年7月11日に施行されることについて、日本カトリック正義と平和協議会は、以下の深刻な懸念を表明します。

 なにより「改正組織犯罪処罰法」が、罪刑法定主義を破壊して犯罪を実行していない人間の意思や内心に立ち入り、言葉や思想を処罰しかねないことを危惧します。

 従来「共謀罪」との共通点が指摘されてきた、「治安維持法」(1925年成立)は、国体の護持と戦争の遂行を目的に、権力に抗するあらゆる者を徹底的に弾圧し、政党の政治活動、労働組合運動、文化運動、学術活動、そして宗教活動などに携わる6万7223人を検挙し、6024人を起訴したと言われています。

 「共謀罪」を盛り込んだ今回の「改正組織犯罪処罰法」においては、何が組織的犯罪集団に当たるのかの定義は曖昧であり、平和や人権問題にとりくむ労働組合や市民団体、あるいは宗教団体が組織的犯罪集団として認定される可能性が否定できません。通信や会話の傍受によるプライバシー侵害、恣意的な捜査や逮捕が、市民の活動を委縮させ、監視社会をもたらし、新たな「治安維持法」として、憲法が保障する思想、信条、信教の自由、集会・結社の自由を制限しかねないことを危疑します。宗教者にとって、自由なコミュニケーションの保障は、信仰の大前提です。それはまた、人間が自分らしく生きるための最も基本的な権利であり、民主主義の根底です。この自由は、すでに2013年12月の特定秘密保護法、2015年9月の安全保障関連法、2016年5月の改正盗聴法・刑事訴訟法の成立により、大きく傷つけられています。

 日本のカトリック教会は、江戸幕府のキリシタン禁制による数万ともいわれる殉教の歴史を引き継いでいます。150年前、幕末から明治の初めにかけても、自らの信仰を表明した長崎の潜伏キリシタンたちは、「浦上四番崩れ」により全国に流配されるという迫害を受けました。

 戦前・戦中の宗教弾圧は、カトリック教会にも及び、1932年の上智大生靖国神社参拝拒否事件、1933年から1934年にかけての奄美におけるカトリック迫害などが起こり、さらに多くの司祭、修道者が逮捕・勾留され、シルベン・ブスケ神父(パリ外国宣教会)など、命を落とす者もありました。

 戦争は、いきなり始まるものではなく、戦争に反対し、自由を求める人々の弾圧、批判をゆるさない強権体制、軍事対決を煽る外交不在の政治から始まります。国家権力が治安維持法などで人々の言論・思想・信条の自由を侵害したことにより、日本は戦争への道をひた走り、周辺国を含めて2000万人以上といわれる犠牲者を生じさせました。

二度と戦争への道を歩むことなく、また、信条の自由をはじめとする基本的人権と人間の尊厳が最大限に尊重される社会を子や孫に残すことがわたしたちの務めです。日本カトリック正義と平和協議会は、今回の施行後、信仰の自由と市民の権利が侵害されることがないように、「改正組織犯罪処罰法」の運用状況を注視し、一刻も早い廃止を求めます。

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