WCRP日本委 核兵器禁止条約採択を歓迎 2017年8月1日

 7月7日に国連で核兵器禁止条約が採択されたことを受け、世界宗教者平和会議日本委員会(杉谷義純理事長)は14日、声明を発表。同条約について、核兵器の使用や開発、実験といった幅広い行為を禁止し、「核兵器のない世界」の実現へ一歩を踏み出したものとして歓迎の意を表明した。一方で、被爆体験を有する日本が条約交渉に参加しなかったことは、国内外の世論を裏切ることになると憂慮。核保有国および核の傘に依存する国々の加盟促進が今後の課題だと指摘した。

(以下声明文)

(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会 核兵器禁止条約を歓迎する声明

 2017 年7月7日ニューヨーク・国連本部で交渉が行われていた核兵器禁止条約が 122 カ国の賛成によ って採択された。WCRP 日本委員会は、この条約が核兵器の使用、開発、実験、製造、保有、移転、貯 蔵などを幅広く禁止し、「核兵器のない世界」の実現に向けて大きな一歩を踏み出したものとして、心か ら歓迎の意を表明する。

 この条約の意義は核兵器が開発されてから 70 余年、初めて法的拘束力がある国際条約として核兵器を 禁止したもので、これにより核兵器は明白に違法なものとして、その存在自体が許されないものとなった ことは、人間の倫理性の勝利であるといえるだろう。

 とりわけこの条約の中で「使用をちらつかせ威嚇すること」をも禁じたことは、核保有国の核政策に対 して非常に重要な影響を与えるものである。これによっていわゆる「核抑止力」を否定することになっ た。元来、核抑止論の本質は、相手に対する威嚇、脅迫、詭計、疑念が横たわり、人間間の不信から生ま れているものである。このような疑心暗鬼の関係はかえって相互の憎悪を増長し、むしろ核使用の危険性 を一層高める可能性があり、むしろ核使用の抑止につながらないとされる。それ故この条約が核武装の論 拠となっている「核抑止力」の否定をも包摂した内容であることを高く評価するものである。

 そしてさらに画期的なことは、被爆者の方々が中心となって訴えてきた「核兵器の非人道性」の主張が 原動力となり条約採択へと導いたことである。会議のエレイン・ホワイト議長が被爆者に向けて「ついに 私たちは核兵器禁止条約を手にすることができた。私たちの背中を押してくれて、有難う」と述べたよう に、交渉に参加した各国代表の多くは被爆者の核廃絶に向けた訴えが採択に大きな貢献を果たしたとの 認識を表している。条約前文に「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)の受け入れ難い苦しみと損害に留意 する」と明記されたことは、大国による軍事バランス論に翻弄されてきた核議論に、人道的見地が取り入 れられ軍縮プロセスに活かされたことになり、この意義は計り知れないものがある。

 さまざまな宗教者からなる WCRP は、「核兵器なき世界」の実現をめざす被爆者や市民社会、NGO、 議員、行政などとともに、核兵器の非人道性を直視して、その認識を共有し、さらには禁止に向けての法 的拘束力のある条約の制定を求めてきた。そして国際環境の不信を増長させる軍事力ではなく、対話にも とづく信頼関係による安全保障の構築を呼びかけてきた。まさにこの度の核兵器禁止条約の採択は、我々 が目指してきた「核兵器なき世界」に向け歴史的かつ画期的な前進である。

 しかしながらアメリカ、ロシアをはじめとする核保有国がこの条約交渉に参加しなかったことは、非常 に残念なことと言わざるを得ない。さらに日本政府もこの条約交渉に参加しなかったことに対し、深く失 望の意を表明する。日本政府は「日本は唯一の戦争被爆国」として核兵器のない世界の実現への使命を謳 い、「核保有国と非保有国との橋渡しをする」という理由で交渉に参加しなかったが、我々は被爆体験を 有する国であるからこそ、核兵器の非人道性を訴えるという強い責務から、積極的な「橋渡し」を日本政 府に期待をしているのである。この度の交渉不参加は、核廃絶を願う国内外の世論の期待を裏切ることに なると深く憂慮する。

 今後はこの条約に核保有国及び核の傘に依存している国々の加盟促進をどのように計っていくかが大 きな課題となる。WCRP 日本委員会は、WCRP 国際ネットワークと共に、核保有国らが早期に参画しこの核兵器禁止条約が実質的な効力をもつ国際規範として定着し、そしてそれが真の核廃絶をもたらすよ う、引き続き、宗教者として祈りと行動を行うものである。

2017 年7月 14 日
(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
理事長 杉谷義純

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