「暴力的過激主義」に焦点 比叡山宗教サミット30周年 2017年9月1日
比叡山宗教サミット30周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」が8月3日から4日にかけて、国立京都国際会館(京都市)、比叡山延暦寺(大津市)、将軍塚青龍殿(京都市)で開催された。24人の海外招請者に加え、在日外国人を含む関係者2千人の参加者があった。
3日、開会式典の後に行われた基調講演では、明石康氏(元国連事務次長)が「分裂と憎悪をどうしたら乗り越えられるか」と題して、その経歴において紛争中にもみられた宗教間対話の具体的事例に言及し、混迷を極める現代の国際情勢において各宗教が「胸襟を開き、対話の場を広げる地道な努力しかない」と語った。次にウィリアム・F・ベンドレー氏(世界宗教者平和会議=WCRP=国際事務総長)が「暴力的過激主義に宗教者はどう立ち向かうか」と題して、各宗教のもつ暴力拒否の理解、また平和に関する多様な見方の共有と拡大を訴えた。
シンポジウムは「テロと宗教――暴力的過激主義に宗教者はどう立ち向かうか」と題して開催。登壇者は、サウジアラビアからムハンマド・ビン・アブドルカリーム・アルイーサー氏(世界イスラーム連盟事務総長)、バチカンよりミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット氏(ローマ教皇庁諸宗教対話評議会次官)、イスラエルよりデビット・ローゼン氏(米国ユダヤ人協会諸宗対話部長)、スリランカよりベランウィラ・ウィマララタナ氏(スリジャヤワルダナプラ大学学長)、フランスよりエマニュエル氏(ギリシャ正教会フランス府主教)、ムスタファー・ツェリッチ氏(前ボスニアイスラム共同体最高指導者)、オーストリアよりファイサル・ビン・アブドゥルラハマン・ビン・ムアンマール氏(アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター事務総長)。
基調講演、シンポジウム共に、世界的な過激派による暴力の行使、その温床ともなる貧困・格差問題に言及。「テロと宗教」が並置されてしまう現状の中、平和のために信頼を建設していく必要を問うた。シンポジウム後、予定にはなかったが、シリアのファーロック・アクビック博士(アブヌール・モスク代表)が登壇し、現状と未来の復興への思いを訴えた。
4日には「核廃絶と原子力問題」「貧困の追放と教育の普及」と題した分科会を開催。21世紀のグローバルな課題として、科学技術の問題、貧困からの解放という二つの主題を真正面から問い、明確化する形となった。
比叡山宗教サミットは、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が1986年に呼びかけた「アッシジの祈りの日」の精神を受け、翌87年、故・山田恵諦(えたい)天台座主の呼びかけで開催。以来10年ごとに開催され、30周年を迎える今回、日本宗教代表者会議(森川宏映天台座主名誉議長)が主催した。