本田哲郎氏〝教派と伝統に固執するな〟 エキュメニカル運動の課題問う 2017年9月11日
2013年の第10回世界教会協議会(WCC)総会を機に発足したエキュメニカル・ネットワーク(前島宗甫代表)は8月23、24の両日、「日本におけるエキュメニカル運動の課題と展望――現場からの問いかけ」を主題とする協議会を、関西セミナーハウス「修学院きらら山荘」(京都市左京区)で開催した。牧師、司祭など関係者約50人が参加。2年前に開催した第1回に続くもの。
初日に基調講演を行った本田哲郎氏(フランシスコ会司祭)は、4代目のクリスチャンという生い立ちから、現在の釜ヶ崎での働きに至るまでを明かしつつ、互いの相違点に目をつぶるのではなく、各教派・伝統の確信と聖書原典を照らし合わせながら向き合うことを促し、「釜ヶ崎の現場では教派、宗教の違い、宗教か無宗教かの差でさえあまり意味がない」として、自分を偽らないエキュメニズムのあり方を語った。
「アガペー」の訳語として、キリシタン時代の「御大切」に言及し、心情において愛することがなくとも他者を大切にすることは可能であるとした。野宿者を飢えたイエス様として、おにぎりと毛布を渡したことで、野宿者から「こんな姿、娘だけには見られたくない」と言わせてしまった経験から、自己と教会の「愛される側」の視点の欠如を知ったという。ゆえに「メタノイア」を「悔い改め」ではなく「視座を移す」と訳出することを提案し、教派と伝統に固執していてはエキュメニズムが実現しないのではないか、腹のくくり方として宗教としてのキリスト教を卒業する、突き抜けるということが必要なのではないかと語った。
また伝道とは、すでに「神の命、神の子の種」がまかれているところから刈り取ることであり、一番低いところ、谷間の日陰こそが「良い土地」であると問いかけた。
24日のシンポジウムでは、斎藤洋子(キリスト者医科連盟・常任委員)、佐藤信行(在日韓国人問題研究所所長・外キ協事務局)鹿野幸枝(大阪YWCA代表理事)の各氏がそれぞれ、「日本キリスト者医科連盟(JCMA)とエキュメニズム」、「外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会と日本のエキュメニカル運動」、「YWCAの歴史と今日的課題」と題して、各団体の歴史と現状について、それぞれの経験を踏まえて発題。
各団体とも第二次大戦前後から課題に祈りつつ取りかかり、必然的にエキュメニカルな協力と形態を獲得した。グローバル時代のマイノリティ問題や歴史的課題に、エキュメニカルに取り組むことの成果が「人間の尊厳」をいかに守っていくかという視座であることが浮き彫りになった。