【映画評】 『沈黙-立ち上がる慰安婦』 強制連行の証言から日韓合意問う 2017年12月1日
日本軍に拉致・監禁され、筆舌に尽くしがたい体験をした元慰安婦たちが、長い沈黙を破り、90年代に謝罪と補償を求めて立ち上がった。その半世紀に及ぶ貴重な記録が公開される。日本軍による「性奴隷」の現場から奇跡的に生還した証人たちによる鬼気迫る訴えを、20年後の生活も映し出しながら改めて未来に伝える作品だ。
監督は、1989年から沖縄戦に連行された朝鮮人「慰安婦」と軍属の実相を追い、『アリランのうた――オキナワからの証言』(91年)で「慰安婦」問題を提起した在日朝鮮人2世の朴壽南(パク・スナム)氏。
映像には、聖書を愛読していたために自身は「慰安所」に通うことはなかったものの、それを傍観することしかできなかったという罪責を告白する元陸軍兵の証言も登場する。戦争が遺した傷のあまりの深さに慄然とする。
2015年、日韓両政府の合意による「解決」を、再三日本を訪れ尊厳の回復を訴えてきた当事者たちは、どのように受け止めているのだろうか。支援団体の分断により、韓国政府からも二重に「沈黙」を強いられることになった経緯も克明に描く。
12月2日よりアップリンク渋谷にてロードショー。基本貸出料3万円での自主上映も募集中。問い合わせはアリランのうた製作委員会・朴麻衣まで。
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(C)2017朴壽南