カザンザキス没後60周年 京大で市民フォーラム 2017年12月25日
カザンザキス没後60周年記念市民フォーラム(カザンザキス友の会主催)が11月26日、京都大学(京都市左京区)で開催され、約100人が参加した(現代ギリシア語教室「エリニカ」、東方キリスト教圏研究会共催、ギリシア大使館、ギリシャプラザ、日本ギリシア語ギリシア文学会後援)。
ニコス・カザンザキス(1883~1957)は、現代ギリシア文学に欠かせない存在感を放つ。マーティン・スコセッシによって映画化された問題作『キリストの最後の誘惑』の原作者であり、教会に破門された人物。カザンザキス文学においては「禁欲」「叫び」「英雄」という主題が、彼のキリスト論に結実しているとも言われる。
中務哲郎氏(京都大学名誉教授)による開会のあいさつの後、第一部では「ニコス・カザンザキスの作品と思想――そして日本とのつながり」と題してヨルゴス・スタシナキス氏(カザンザキス友の会会長)=写真=が講演。
カザンザキスが「サクラ」「ココロ」という日本語を知っており、2回の来日(1935年、1957年)の後、ギリシアへの帰路において没したことを指摘。日本人の特徴として挙げた「名誉と礼節」が彼の作品世界に影響を与えているとし、カザンザキス作品の継続した翻訳と今後の研究を呼びかけ、友の会結成30周年を記念するフォーラムの開催を発表した。
第2部では、福田耕佑(日本学術振興会研究員)、吉川弘晃(京都大学大学院生)の両氏が「カザンザキスと『東方』」と題して講演し、カザンザキスの思想において日本を含む「東方」が彼の「ギリシア観」の形成に大きな影響を与えたとした。特にカザンザキスの1927年のロシア訪問を取り上げ、ギリシア文学研究がソヴィエトの知識人ネットワーク研究に寄与する可能性について述べた。
続いて、『キリストは再び十字架にかけられる』の翻訳出版に携わった藤下幸子、田島容子の両氏が、十数年に及ぶ翻訳の苦労と、物語の舞台となった小アジアやコーカサス地方の歴史や習俗について写真を交えながら解説した。
福田氏は、「カザンザキス文学における日本は、例えば映画『その男ゾルバ』の原作において『不動心』という形で表れている。来年の友の会30周年記念大会を機会に多くの人に知っていただきたい」と語った。